「吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ」と私たちの先輩は、八十年前に高らかに宣言した。「呪はれの夜の悪夢」のなかから、「人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動を起」し、一人ひとりが人生に情熱をもち、みずからが発光体になるとき、人生は意味をもち、世界を切り拓くことができるのだと宣言した。そして、綱領のなかでは「吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向かって突進す」と、部落の解放が全人類の解放をめざすものであることも明らかにしたのである。
以来、私たちの先輩が歩んできた八十年の道のりは、まさに荊の道のりであった。しかし、全国水平社創立大会の「宣言」と「綱領」の精神・思想は、私たちの行く手を照らし出すものとして、厳しい弾圧が権力者によって画策され、暴虐の嵐が吹き荒れるなかでも、脈みゃくと受け継がれてきたのである。
今年は、この全国水平社創立八〇周年であり、一九六九年いらい三十三年間にわたってつづけられてきた「特別措置法」が終了を迎えた年でもある。私たちの運動は、今この時に、新たな局面に突入したのである。
「特別措置法」のもとで、部落の住環境は一変し、組織は拡大した。しかし、そのなかで部落内での民主化が不徹底であることなどから多くの問題を生み出したことも事実である。また、部落の生活や労働、教育の面でも課題が残されているし、差別意識がいまだになくなっていない、という現実も直視する必要がある。こうした、「特別措置法」のもとでの成果と欠陥をしっかりと総括しながら、新たな段階の部落解放運動を展開していくことが、いま私たちに求められているのだ。「特別措置法」のもとでの成果を部落の内から外に拡大、普遍化すること、部落差別を解消し、人権政策をおしすすめていくために新たな法や制度を確立していくこと、「一人は万人のために 万人は一人のために」という狭山闘争のなかで培われた反差別共同闘争を国内外に拡大していくこと。このことが「宣言」「綱領」の精神・思想を受け継ぎ、現代に復権させることにつながるのである。
いま、グローバリゼーションという妖怪が、地球上を覆っている。これを、グローバル・スタンダードという名のもとに、国際的な金融などを中心にした資本が跋扈し、環境破壊や貧困化、生活破壊を強いながら、「テロリストを許すな」という声のもとに、管理支配体制が強化された軍事国家の世界にするのか、あるいは人権の二一世紀として、すべての民衆が横断的にネットワークを結び、それぞれの自己実現をはかりながら、ともに生きる世界を構築するのか、すべては今後の私たちの闘いいかんにかかっているのである。
私たちは、自主・共生・創造の合言葉のもと、第3期の部落解放運動を創造し、部落解放――人間解放の「よき日」をめざし、さらに闘い抜くことを心新たに誓い合うものである。
右、宣言する。
二〇〇二年五月十日
部落解放同盟第59回全国大会
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