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個人情報保護法案にたいする基本的立場と見解

部落解放同盟中央執行委員長
         組坂 繁之

 個人情報保護に関する法案が今国会で審議され、政府与党は成立を狙っている。部落解放同盟は4月7日、組坂繁之委員長名で、基本的立場と見解を明らかにした。その全文を掲載する。

 政府は、「個人情報の保護に関する法律案」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」を第156通常国会に上程、野党4党も対案を4月3日、衆議院に提出し、その審議がすすめられようとしている。
 政府案は、「官による民の支配を強めるもの」との大きな批判のなかで、昨年の臨時国会で廃案となったものを、行政関係への罰則規定の新設と、「利用目的の制限」などの「基本原則」を削除しただけのしろもので、「相当の理由」があると行政機関が認めれば、目的外利用や他省庁への提供もおこなわれるという、政府にフリーハンドを与えたものといえる。
 昨年の防衛庁による情報公開請求者リスト問題をみても明らかなように、個人情報は、支配・管理の目的で悪用されており、私たちは、戸籍謄抄本などが身元調査に悪用されている差別の実能も、よく知っている。
 私たちはこれまで、戸籍制度の廃止を含め、社会的差別を生むおそれのある個人情報の収集禁止、請求者や目的などの開示請求制度の確立を求めるとともに、差別を生む社会システムそのものの変革をめざし、とりくみをすすめてきた。
 差別のない社会を実現していくためにも、個人情報保護法制では、社会的差別を生む、思想・信条、社会的身分、門地、民族、宗教、病歴、犯歴などのセンシティブ情報の収集禁止を盛りこみ、自己情報コントロール権を明確に規定する必要がある。また、政府から独立した第三者機関を設置し、行政機関の個人情報の収集・利用をチェックするとともに、複数の個人情報ファイルをくみ合わせ特定の集団を浮かびあがらせるなどのデータ・マッチングも規制しなければならな。 昨年8月、「住民基本台帳ネットワークシステム」が稼働し、今夏にはその第2次稼働と「住基カード」の交付が強行されようとしている。この「住基ネット」は住民の一人ひとりを国家が把握し管理しようとするものであり、その「円滑な運営」のための「保護法」であってはならない。
 また、「個人情報の保護」を名目にした、表現の自由や、政治活動、社会運動、市民運動への国家による規制を、可能にする余地を残してはならないことは、いうまでもない。
 私たちは、政府の「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」「個人情報の保護に関する法律案」に反対するとともに、社会的差別を生むセンシティブ情報のとり扱いに関して「あらかじめ本人の同意を得ないで……とり扱って
はならない」にとどまっている点や、またNGO(非政府組織)や住民組織、労働組合などが適用対象となる可能性を残した野党案にも強い懸念を表明するものである。
 部落解放同盟は、差別のない社会を実現するための個人情報保護法制の確立をめざすことを、あらためて明らかにするものである。

 

 

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