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ハンセン病元患者に対する
ホテルの宿泊拒否に抗議する声明

 

 11月18日、熊本県内で、ハンセン病元患者ら22人にたいして、県内のホテルが宿泊を拒否するという人権侵害が起き、元患者らはこれに強く抗議した。「ハンセン病元患者にたいするホテルの宿泊拒否に抗議する声明」を掲載する。

 11月18日、能本県の潮谷義子・知事が定例記者会見で、県の「ふるさと訪問事業」でハンセン病の元患者ら22人を県内の温泉に招待するため、宿泊をホテルに申し込んだが拒否され、人権侵害として抗議したことを明らかにした。この差別による宿泊拒否にたいし、部落解放同盟として強い抗議の意志を明らかにするものである。
 宿泊を拒否されたのは11月7日で、県は「感染の恐れはない」と再三説明し、熊本法務局も事情聴取に入ったが、「アイレディース宮殿里川温泉ホテル」の総支配人は「病気が伝染しないことが、必ずしも世間すべてで認識されているとは限らない。ホテルのイメージダウンにつながる可能性もある」と方針を改めず、ホテルを経営する化粧品訪問販売会社「アイスター」(本社・東京)も総支配人の方針を追認していた。
 ところがこの事件が大きく報道された後の19日になって、総支配人は一転して記者会見を開き謝罪した。そして、20日にハンセン病療養所・菊池恵楓園を訪れ、入所者に「私どもの無知と認識不足で、大変不愉快な思いをさせた。宿泊拒否はしない」と謝罪した。
 このホテルによる宿泊拒否差別事件の一連の経過を考えると、県の説得にも応じなかったホテルの姿勢はきわめて差別的で悪質である。ホテル側の謝罪にたいし、元患者が「本当に謝罪する気持ちがあるなら、心の変遷を伝えてほしい。心を打つ話があるはずだ」と鋭く糾弾したが、形だけの謝罪では問題は解決しない。ホテル側は元患者の糾弾に真撃に応えるべきである。
 また、この事件の背景には、国が戦前・戦後にわたり徹底した隔離政策を続けたことによって、ハンセン病が強列な伝染病との誤った認識を人びとに植え付け、偏見と差別を助長しっづけてきた歴史がある。この隔離政策について2001年の熊本地裁の判決は、ハンセン病は感染し発病にいたる恐れがきわめて低い病気で、「らい予防法」が改定された1953年当時は特効薬が発見されており、遅くとも60年以降は隔離は必要なかったと、国の政策の誤りを認定し国家賠償を命じた。そして、不充分ながら元患者の人権回復がはかられてきたが、社会的な根深い差別意識にたいして、啓発が決定的に遅れている。
 また、日本には差別を犯罪として罰する法律が整備されておらず、日本社会には、差別によって人間の尊厳を傷つけることが社会悪であり明確な犯罪であるという厳しい認識が不足している。そのことも今回の事件の大きな要因である。国は、人権教育・啓発の抜本的強化、差別を禁止する法整備、人権侵害の救済機関の設置を早急に実行しなければならない。
 部落解放同盟として、この宿泊拒否事件にたいし怒りをもって抗議し、ホテルと本社の真撃な対応を求めるとともに、このような差別事件の再発を防ぐため、国や自治体が人権教育・啓発を抜本的に強化することを求めるものである。

2003年11月20日

部落解放同盟中央本部

執行委員長 組坂繁之

 

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