イラクへの自衛隊派遣基本計画
の閣議決定に対する抗議声明
小泉内閣は12月9日、「イラク復興支援特別措置法」にもとづく自衛隊派遣の基本計画を閣議決定した。依然として戦闘が続くイラクの現状が報じられ、日本大使館関係者3名が銃撃を受け殺害されるという悲劇が起きた中で、いま自衛隊派遣反対の声は世論の大勢を占めている。にもかかわらず、充分な国会論議さえもおこなわず「基本計画」を決定したことは、歴史に残る暴挙といわなければならない。
そもそも米英軍によるイラク先制攻撃は、国際法違反であり、国連のアナン事務総長も強く非難している。また、攻撃の最大の理由となった大量破壊兵器もいまだ発見されず、全く大義の無い戦争であることが国際的に明確になっている。さらに、米英軍による占領のなかで、一般市民も含めた犠牲者が増えつづけるだけでなく、復興どころか市民生活の破壊がすすみ、イラクの人びとの占領軍への反発が強まっている。このような現状の中で、イラクへ自衛隊を派遣することは、米英の暴挙と占領に日本が加担することであり、「復興支援」ではない。
また、今回はこれまで派遣してきた国連平和維持活動(PKO)とは違い、イラク政府が存在せず、戦闘が続く米英軍の占領下への派遣であり、「集団的自衛権」の行使にあたる明白な憲法違反である。「非戦闘地域への派遣」「目的は復興支援」として「イラク復興支援特別措置法」を強行成立させた経緯から考えても、今日、米軍でさえ「非戦闘地域は存在しない」と明言しているイラクへの自衛隊派遣はできない。
これまで日本は、中東諸国との友好関係を築いてきたが、米英の暴挙を支持し占領に手を貸せば関係は悪化する。さらに、自衛隊を派遣すれば日本国内へのテロ攻撃が予想されるにもかかわらず、何ら国民への安全対策さえ取らずに、「テロに屈してはいけない」と強調するのみで説明責任を果たさない小泉内閣の姿勢は無責任極まりない。いま必要なのは、国連を中心にした枠組みでの復興支援とイラク人による政府の早期確立である。
民主主義、平和主義、人権主義を柱とした日本国憲法のもと、いままで戦闘によって他国の国民を一人も傷つけ、殺さなかった日本が、戦闘の発生も想定しながら自衛隊を初めて海外に派遣する。このことを絶対に許すことはできない。
われわれは、小泉内閣による自衛隊派遣の基本計画決定の暴挙に強く抗議し、その撤回を求めるとともに、日本がイラクの人びとに対する国連主導の人道的復興支援の枠組み作りのため力を尽くすことを強く求めるものである。
2003年12月10日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂 繁之
部落問題資料室INDEXへ
トップページへ |