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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド

2008年度(第65期)一般運動方針

《第Ⅰ部 基調方針》

二 部落解放運動の再生に向けた基本課題

 1 危機的状況への現状認識と「再生・改革」運動の継続
  ① 危機意識の大衆的共有へのとりくみ

 部落解放同盟は、一昨年来の一連の不祥事を契機にして、戦後最大の危機的状況にあるとの現状認識をふまえて、失墜した社会的信頼の回復とともに運動と組織の再生をはかるために、躊躇なき改革へのとりくみに全力を集中しています。
再度確認しておきますが、現在の「危機」とは、部落解放運動の存在と歴史そのものが問われている危機であり、たんに部落解放同盟の組織的存亡の危機ということではないという認識が必要です。この危機をつくりだしたのは、政治権力や行政・マスコミなどの外的要因もありますが、第一義的には部落解放同盟自身の内的要因であるとの認識姿勢が大事です。
「組織総点検・改革」運動や都府県連別支部活動者会議のとりくみは、すでに全国を3巡しました。このなかで明らかになったことは、都府県連・支部の幹部段階では危機意識が浸透してきていますが、支部同盟員の一人ひとりにまで共有しきれていないということです。この状況を早急に克服し、危機意識を大衆的に共有するためのとりくみを徹底していくことが部落解放運動の再生のためには不可欠の課題です。
② 危機を生み出す運動的・組織的体質を一掃するとりくみ
 今日の危機的状況をつくり出した旧態依然とした部落観や活動スタイルから脱却するためには、「部落解放運動への提言」でも指摘されている「特措法時代」の弊害を克服する意識改革(捨てる勇気)を、まず各級機関の幹部から徹底的におこない、そのうえで中央本部・都府県連から支部同盟員へのていねいなオルグ行動を実施していくことが重要です。
「組織総点検・改革」運動のなかで指摘されてきた、各地域での各種の「懸念事項」の存在は、「一連の不祥事」を生み出した運動的・組織的体質と同根であるとの厳しい認識をもたなければなりません。
この認識に立つと、部落解放運動再生への道は、各地域の全支部・全同盟員が部落解放運動の原点に立ち戻って、運動と組織を「創りなおす気概」を発揮できるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。
③ 「特措法時代」からの体質脱却への徹底した意識改革のとりくみ
 したがって、本年度の最重要課題は、全支部で、「危機への認識の共有」「新たな状況への対応の確立」「地域性をふまえた運動課題の発掘」などを柱に、徹底的な意見交換をすすめ、同盟員一人ひとりが主体的に部落解放運動再生へのとりくみに参画していく活動をつくり出すことです。
そのとき、活動の立脚点は、厳しい差別の現実のもとで自主解放の旗を高く掲げた「水平社宣言」の解放思想であり、戦時下の部落解放運動を地域からの世話役活動で再生させた「部落委員会活動」の活動スタイルであり、現代の部落差別の社会的存在意義などを明らかにした「三つの命題」の解放理論を拠り所に、それらを今日的に継承・発展させるということです。
昨年の運動方針でも明らかにしてきたように、85年におよぶ部落解放運動がかちとってきた社会的貢献につながる多くの成果(教科書無償化や奨学金制度など)を守り発展させていくためにも、これまでの悪しき運動的・組織的体質から脱却して、それらの成果にたいして胸を張って「これが部落解放運動の歴史的・社会的使命だ=cd=b930」と対外発信できる状況を1日も早くつくりださなければなりません。
わけても、今年は「解放令(1871年)は5万日の日延べになった」とされてから、「5万日」を迎えます。今日もなお部落差別を払拭し切れていない現状と歴史認識をふまえ、歴史的・社会的使命をまっとうしていかなければなりません。
④ 「再生・改革」運動の継続
 一昨年来から3巡した「組織総点検・改革」運動は、今日的に運動と組織が抱える問題を、「懸案事項」として具体的にえぐり出してきました。この段階で、基本的には総点検を終えて、具体的な再生への改革に着手すべきだとの判断に立ち、今後は「部落解放運動再生・改革」運動として継続していきます。
そこでの要点は、第1に、「一連の不祥事」を生み出した運動的・組織的土壌および「特措法時代」の悪しき体質と弊害(懸案事項)を徹底的に克服していくことです。第2に、各都府県連・支部が、これまでの闘いの成果を継承発展させる観点から、今日的な「運動の停滞」「組織の減少」「財政の困窮」「人材の不足」についての原因究明を徹底的に分析することです。そのさい、現状の問題点の理由を「少子高齢化」などのどこの地域でも共通する現象に求めることではなく、地域の部落大衆から部落解放同盟が本当に必要とされ信頼されているのかという観点から分析し再生課題をつかみとることが必要です。第3に、そのためにも、各支部自身が地域や組織の実態を正確に把握し、地域性を大事にした新たな運動課題を明確にしていくとりくみを真剣に実施することです。

2 「部落解放運動への提言」にたいする基本対応
① 一昨年の「一連の不祥事」を契機にして、私たちは、部落解放同盟の主体的な責任にもとづいて問題惹起の原因究明をおこない、社会的信頼の回復と運動の再生への方向性を昨年の全国大会で明らかにしてきました。
同時に、それらの原因究明や方向性が独善的なものになっていないかを検証し、外部からの視点による独自の分析や課題を提起してもらうために、「部落解放運動に対する提言委員会」を昨年3月5日に立ち上げてもらいました。
② 上田正昭・京都大学名誉教授が座長に就任し、各界から15人の委員構成により、7回の委員会、4回の起草小委員会(小委員長=沖浦和光・桃山学院大学名誉教授)が開催されました。各委員は、それぞれの立場から長年にわたって部落解放運動との深いかかわりをもち、部落解放同盟への熱い期待を抱いている人たちであり、それだけに率直で忌憚のない厳しい論議がなされてきました。昨年12月12日には「部落解放運動への提言」が 部落解放同盟に手交されました。
③ 私たちは、「提言」を謙虚に受けとめ、真正面から向き合い、実践のなかで血肉化していかなければならないと決意しています。「提言」についての組織内部での大衆的な学習と討論を積み重ね、運動と組織を根本から問い直す議論を展開し、同盟の主体的判断と責任にもとづく「提言」内容の具体化を実現していきます。
④ 部落解放同盟が「提言」に誠実に応えるとは、社会的責任にもとづき社会的信頼を回復するということであり、全国水平社以来の歴史と伝統に恥じない部落解放運動の再生を短期間に実現するということにほかなりません。この実現こそが、「提言」策定に努力をしていただいた提言委員のみなさんの思いにも応えていくことであると確信しています。

3 「運動と組織の再生」に向けた基本課題
① 新たな運動展開への構想と組織改革が必要
 部落解放運動の再生を実現するためには、まず第1に部落解放運動の社会的・歴史的使命が「部落差別の撤廃」であることを再認識し、第2にその使命を実現していくための今日的な運動の課題ととりくみ方向を明確にし、第3にその課題を具体的に実践していくための機能的な組織へと再編・改革することが必要です。
部落解放同盟は、今日的な部落解放運動の危機の核心が33年間の特措法時代の負の側面として堆積されてきた運動的体質と組織的構造にあるとの認識に立って、新たな状況のもとでの運動と組織のあり方に関する根本的な議論を深めると同時に、部落解放運動にたいする責任をもって躊躇なき改革を断行していかなければなりません。
② 運動再生プロジェクトの立ち上げ
 昨年の第64回全国大会の「基調方針」および「部落解放運動への提言」を具体化していくために、今年度はつぎのとりくみをおこないます。
第1に、「規約改正」検討プロジェクトを立ち上げます。そこでは、運動と組織の体質改善のために、権力構造を固定化させず公正・公平な行使を可能にするとともに新たな運動展開に即応できる方向での検討を軸にした作業をおこないます。具体的には、支部単位やブロック体制のあり方、支部長選出にさいしての運動経歴などの資格条件の厳格化や任期の有期限制の問題、統制事案にならない前に事前に各級機関への内部チェックを可能にする組織指導の強化の問題、同盟員による監査や機関会議の開催請求などについての権限強化などの問題です。大衆的に1年間の論議を重ねて、来年の全国大会には規約改正を提案します。
第2に、部落解放運動を担う同盟員資質のあり方を明確にするために、自力・自闘を中心テーマにすえて、「行動指針」の策定をおこないます。この作業は、中央理論委員会の再活性化へのとりくみとして着手していきます。「行動指針」については、可能な限り早急に案文策定をおこない、各級機関での討議のうえで、来年の全国大会で最終的に決定します。 
第3に、中央理論委員会を外部委員を含めた恒常的な常設機関として活性化させ、「今日的な部落差別をいかにとらえるか(現在の部落差別のあらわれ方と差別への認識)」、「部落解放とはいかなる状態なのか(部落問題解決の状態に関する具体的指標)」、「部落解放運動の歴史的・社会的使命とは何か(運動史の整理と展望)」などを中心に解放理論を深めるとともに、ときどきの理論的成果を組織内外に適宜公表しながら、議論・学習活動を積み重ねていきます。
第4に、組織内外の有為な人材を活用して「情報ネットワーク戦略プロジェクト」を早急に創設し、活動を開始します。その目的は、インターネットの積極的活用によって、反差別・人権情報を系統的・多角的に発信していく体制を整え、国内外での連携を強めながら、悪質な差別・人権侵害の書き込みを質的に凌駕していくとりくみをおこなっていくことです。
また、組織内部の「まちづくり」や「ムラ自慢・支部自慢」情報などの交流、各地域の特産物の物流情報などもインターネットを活用して、地域ごとにつながり合える場所をつくり出していくことも検討します。
第5に、支部-都府県連-中央本部の活動を双方向で有機的につなぎ合うための中央オルグ団活動の抜本的強化をはかっていきます。すでに、中央オルグ団の登録は一昨年から実施されていますが、実効性を高めるために再編・強化していきます。同時に、中央オルグ団の主たる活動場所を支部・地域で徹底した現場主義の活動スタイルをつくり出し、地域からの日常活動を活性化させるとりくみに重点をおきます。
第6に、これらのとりくみと連関させながら、部落解放運動の過去・現在・未来に関しての同盟員総学習運動を、さまざまな場をつくりながら展開していきます。今日の部落解放運動の現状を見るならば、同盟員一人ひとりの意識変革を目的意識的に成し遂げていくことができるかどうかが、部落解放運動の再生をかちとることができるかどうかに直結する最重要の課題であるといえます。
③ 指導性強化に向けた中央執行体制の改革
 以上のような基本課題を実践化していくためには、まず中央本部から率先垂範のとりくみを開始しなければなりません。現中央執行体制のあり方と機構を一新するという気概をもって改革を推進し、かけ声だけではなく具体的に変わっていく姿が誰の目にも明らかな形で見えるようにしていく必要があります。
これらの課題は、規約改正ともかかわる要素があり、1年間慎重に議論を重ねたうえで実行に移していくことを基本に検討作業をおこないますが、着手可能な課題については積極的に実現していきます。中央執行体制の改革への基本的な視点と課題はつぎのように考えています。
第1に、部落問題解決の鍵は部落(地区)のなかにではなく、日本の社会関係のなかにあるとの観点から、部落内外との協働のとりくみを大胆におしすすめる「外に打って出る」執行体制へと変革していくことです。そのために、これまでの肥大化・形骸化してきている面もある現行の中央執行体制を抜本的に見直し、責任体制を明確にしながら機能的・実働的に改革していきます。
第2に、中央執行体制を実質的に強化していくという観点から、中央役員以外からも有為な人材を地域・外部からも自薦・他薦により積極的に活用していく方途を検討していきます。とりわけ、創設する各種プロジェクトや中央オルグ団および課題別運動分野などでの専門委員の選任にあたっては、それぞれの権限や責任所在を明確にしながら、目的意識的に前述の観点からの人材活用をおこなっていきます。
第3に、行政施策への依存傾向から脱却するという視点を明確にするために、行政の受け皿的組織形態ともいえるこれまでの「○○対策部」という呼称から、「○○運動部」へと名称変更とシステム改編をおこなっていきます。名称変更は、「名は体をあらわす」という言葉があるように、課題別分野での部落大衆の要求を行政施策の枠内に閉じこめるのではなく、他の分野にもまたがる総合的・横断的な要求として組織化していくということであり、その問題解決へのしくみを部落外との協働のとりくみにつなげる運動として意識的につくり出すということを意味しています。
第4に、今後の地域からのとりくみを重視するという運動と組織のあり方に即応して、中央集権的な執行体制から分権的なブロック別執行体制への移行検討や中央本部事務所のあり方に関する問題などについても慎重かつ迅速に検討をしていきます。
第5に、中央本部が主催・共催する全国諸集会のあり方に関して、今年度は最終的な改革の結論を出し、来年度からの全国諸集会に適用・実施していきます。
④ 「部落解放運動再生・改革」全国行動の実施
 昨年から3巡した中央役員・中央オルグによる「都府県連別支部活動者会議」「組織総点検・改革」運動のとりくみをふまえ、今年度は再生への意識改革が全支部・同盟員に徹底することを目的にして、集中的な「再生・改革」全国行動を実施します。
全国行動の実施時期は、今秋期を予定し、各都府県連も当該地域での全支部にたいする網の目オルグ行動を実施しながら、全国行動に呼応したとりくみを展開します。
全国行動の実施に向けては、オルグ団を早い時期に編成し、オルグ団員にたいする学習を系統的に積み上げるとともに、都府県連は周到なオルグ受け入れ計画を実施2か月前までに策定し、支部大衆と徹底的な双方向の意見交換ができるように準備することとします。そのためには、受け入れ側である支部もみずからの地域の現状把握をふまえた運動課題や悩み(問題点)を提案できるように準備しておくことが必要です。
また、この全国行動を人材育成の場としても活用できるように、目的意識的なとりくみを計画・実施していきます。

三 今年度の重点とりくみ課題

 1 格差社会のもとで急増する差別事件にたいする糾弾闘争強化の課題
  ① 世界的なグローバル化のもとで、あらゆる面で格差の二極化が進行しており、日本でも深刻な格差拡大社会の様相を呈してきています。戦争ができる国へと政治が反動化し、市場原理主義・自由競争の経済が貧富の格差や地域間格差を拡大し、大きな社会不安が蔓延してきています。
  このような社会状況のもとでは、人びとの心は荒び、極度の緊張を強いられ、不安のはけ口を求めはじめ、さまざまな分野で差別事件が起こっています。
  歴史の教訓は、差別の社会的機能として、社会的な矛盾が被差別者である「社会的弱者」に集中していくことを教えています。現在の日本がまさにその状況にあることを見すえて、「差別の社会的存在意義」からの深い社会分析が必要です。
  ② 現実に悪質・陰湿・巧妙化する差別事件の事例は、枚挙にいとまがない状況です。とりわけ、電子版を含めた新たな部落地名総鑑差別事件、行政書士などによる戸籍等大量不正取得事件、おびただしいインターネット差別書き込み事件、新採時の統一応募用紙違反の急増などが特徴的です。これらの事例は、教育、就職、結婚が部落問題解決への主要課題であることをあらためて示しており、全国的なとりくみをさらに本格化させていくことが必要です。
  ③ したがって、部落解放運動の基本が差別糾弾闘争であることをふまえ、一つひとつの差別事件がもつさまざまな問題を分析しながら、糾弾闘争の強化をはかっていきます。そのさい、あらためて「糾弾の必要性・正当性」と「糾弾闘争の原則(社会性・説得性・公開性)」をさらに徹底していくことが求められています。
④ また、部落差別の実態が5領域であらわれてくることを考えるならば、顕現化した差別事件にたいする糾弾闘争だけが「糾弾」ではなく、生活現場や社会関係に潜在する差別実態にたいする闘いも「糾弾」であることを明確にしておく必要があります。

2 生活現場から「人権のまちづくり」運動を根づかせる課題
① 「人権のまちづくり」運動は、地域からの再生をめざす今後の部落解放運動にとって最重要の課題として位置付いてきます。昨年開催した「まちづくり実践講座」「経験交流会」で、「人権のまちづくり」運動の重点課題の確認をしてきました。今年度も引き続きその具体化にとりくみます。
重点課題の第1は、全都府県連で「人権のまちづくり」運動推進本部の常設、第2は地域性を生かした「まちづくり」の独創的な名称の考案、第3は部落内外をこえた「まちづくり」への課題の把握、第4は「まちづくり」の拠点施設として隣保館の積極的な活用、第5は差別撤廃・人権条例の「まちづくり」での具体化と豊富化、第6は各地の「まちづくり」を学び合い経験を共有する活動の継続、第7は「まちづくり」情報共有への発信・広報活動の充実、第8は「まちづくり」運動経験交流会に各地域から実践報告をもち寄る、ということです。 
② 「人権のまちづくり」運動は、生活現場での人と人との関係を豊かに結び直していくことによって差別を克服し、安全・安心・希望のもてるコミュニティ(共同体)を創り出していこうとするとりくみです。
そこでは、「人権の核心は、人間の尊厳と生存権」であるという視点を堅持しながら、箱物づくり(ハード事業)ではなく、福祉、教育、就労、住環境分野などのソフト面を中心にして、各分野ごとの独自課題を追求しながら、総合的・系統的に「まちづくり」という運動に集約していくことになります。
今後、さらに部落解放運動での「人権のまちづくり」運動の位置づけを理論的に深めていくとともに、各分野での独自のとりくみと、「まちづくり」運動としての横断的なとりくみとの連関を組織的・運動的に整理していくことが必要です。
③ 同時に、すでに各地でとりくみがすすめられているまちづくり運動の情報を地域から発信していく体制を確立して、機関紙や通信・ホームページなどを活用して各地の経験を全国的に共有していくとりくみを強化していきます。そのためにも、昨年から開催しはじめた「まちづくり実践講座」と「経験交流会」は、今後も内容の充実をはかりながら継続していきます。

3 反差別の視点から「人権の法制度」確立をめざす課題
① 「人権のまちづくり」運動と並んで、部落問題解決のしくみをすべての人の権利伸長につなげていく「人権の法制度」確立のとりくみは、部落解放運動の今後の戦略課題に位置づくものです。当面する「人権侵害救済法」制定のとりくみは、その重要な一環です。
安倍政権のもとで黙殺されてきた「人権侵害救済法」の国会再提出の動きは、昨年7月の参議院選挙での与野党逆転によって政治局面が大きく変わり、現実的な課題として浮上させる状況をつくり出してきています。
この好機をとらえて今国会での法制定の実現をかちとることに全力をあげてとりくみます。これまでの6年におよぶ議論の経過をふまえ、独立性・実効性を担保した法律として決着をつけていかなければなりません。
② 政府段階での「人権の法制度」を確立するとともに、自治体段階での「人権の条例制度」を確立するとりくみが重要です。そのために、行政闘争を本来的な「差別行政糾弾闘争」として再構築していくとりくみが必要です。
とりわけ、「特措法失効」や「一連の不祥事」を口実にして同和行政・人権行政を後退させようとする自治体にたいしては、差別実態をみずからの力で把握し、大衆討議のなかで差別撤廃への「要求書」(差別行政糾弾要綱)としてまとめ、説明責任と情報公開をもとにした行政交渉を強化していきます。
そのさい、同和行政・人権行政の法的根拠は、憲法や「人権教育・啓発推進法」、日本が批准・加入した国際人権諸条約であることを明確にするとともに、広範な住民運動として「差別撤廃・人権尊重」の自治体条例の制定、充実や具体化と結びつけていくとりくみをすすめます。
③ また、昨年1年間をかけて討議策定した「男女平等社会実現基本方針(改訂版)」および「社会的セーフティネット構想」を具体化していくとりくみを強力におしすすめるとともに、さらに内容の充実・豊富化をめざすとりくみを積み上げていきます。
④ とりわけ、今年が「世界人権宣言」60周年にあたることを契機として、「平和の基礎は人権の確立であり、人権確立の基礎は差別撤廃である」という「世界人権宣言」の基本精神を具体化させていく創意工夫あるとりくみを各地で展開し、国内外の反差別・人権運動の協働化を拡大・深化させるとりくみを追求していきます。

4 狭山第3次再審勝利と司法の民主化をかちとる課題
① 狭山闘争は、部落解放運動のなかで「一人は万人のために、万人は一人のために」という思想をうち固めてきた重要な闘いであり、勝利をかちとるまでねばり強く継続しなければなりません。
この数年間、石川さんの無罪をかちとり、狭山闘争に勝利するためには、どのようなとりくみが本当に必要なのかということを真剣に模索してきました。集会のもち方や国民へのアピールのしかた、他のえん罪事件との連係、弁護団活動の強化など、狭山第3次再審勝利への工夫あるとりくみをおこなってきました。今後もさらに多様なとりくみ方を追求し、狭山闘争の勝利を現実のものにするとりくみを強めていきます。
② また、狭山闘争の大きな壁になっている司法の民主化のとりくみも強化していきます。昨年12月4日に「刑事訴訟法改正案(可視化法案)」が国会に提出されました。これは、狭山事件などのえん罪の温床になっている密室での取り調べにたいして録画記録などを義務づけて取り調べ過程の可視化と証拠開示をおこなおうというもので、松岡徹・参議院議員などが中心となって民主党が提出したものです。先の臨時国会で継続審議となった法案の取りあつかいが、今後どのようになっていくか不確定ですが、司法の民主化に向けて注目すべき法案として、成立へ向けたとりくみを強化していきます。あわせて、証拠開示や別件逮捕、代用監獄の廃止などの民主化をすすめていくことも重要です。
③ さらに、狭山第3次再審闘争と司法の民主化闘争を結びつけながら、広範な人たちとの連携をもった市民運動としての広がりをいっそう強化するとともに、「狭山住民の会」活動などの地域でのとりくみをさらに拡大し、狭山闘争勝利へのすそ野を大きくし、狭山裁判を国民的・国際的監視のもとにおく状況をつくりだしていきます。
④ 狭山闘争をねばり強く継続させていくためにも、闘争財源の問題についての真剣な議論が必要な段階になってきています。27人に強化された狭山弁護団の活動をしっかりと支えていくためにも、大衆カンパ活動などを含めた地道な財源確保のとりくみを強化していきます。

5 衆議院選挙での「松本龍」副委員長の7選必勝の課題
① 昨年の参議院での与野党逆転が政治の流れを大きく変化させた事実をふまえるならば、当面する衆議院選挙は、私たちがめざす「人権立国」の実現に向けた政治の流れを確実なものにしていく決定的に重要なとりくみです。
② 衆議院解散・総選挙の日程は、予算成立後の4月とも洞爺湖サミット後の7月ともいわれています。 部落解放同盟は、組織内候補として「松本龍」副委員長(福岡1区=福岡市博多区・東区)の7選必勝を実現するために全力を傾注します。すでに、昨年の12月に中央選挙闘争本部を立ち上げて体制を整えていますが、全国の同盟員が知人紹介活動を徹底しておこなうとともに、地元の福岡県連のとりくみを物心両面から支援する体制をとっていきます。
③ 「松本龍」副委員長7選必勝とともに、民主党・社民党を中心にして部落解放運動に熱心に連帯する候補者と政策協定にもとづく推薦をおこない、「人権立国」実現に向けて全推薦候補の当選のためにとりくみを強力にすすめていきます。

 

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