学校間の「過度な競争」を否定した教育委員会の「非開示」決定
8月11日、鳥取県教育委員会は、県情報公開審議会の「開示決定(7月8日)に反対し、2008年度に限り県内の学校別・全国学力調査結果を「非開示」とすることを5対1の多数決で決定した。これは、部落解放運動をはじめ、鳥取県市町村教育委員会研究協議会や全国連合小学校校長会をはじめとした県内外の非開示を求める要望や、同じく非開示を求める2007年の文科省「全国学力・学習状況調査に関する実施要領」や仙台高裁判決を尊重した妥当な結果であった。
依然根強い「開示するメリットの方が大きい」という市場原理主義の考え
しかし今回の決定は、あくまで2008年度限りであることに深い危惧を抱かざるを得ない。鳥取県知事や教育長は、依然、開示を求めているし、全国的にも埼玉県ではこの秋に情報公開審議会が決定を出そうとしているし、首相の諮問機関・規制改革会議は学校別の開示を学校選択制の実施とあわせて強く求めている。
その背景には、「開示して学校間の競争に弾みがつけば停滞がなくなりいい結果が生まれる」という、市場原理を教育に持ち込もうとする考え方がある。他方で、ホームページで公開したり学校選択制を実施しない限りは学校間の「過度な競争」や「序列化」にはいたらないし、実際、鳥取県の基礎学力調査結果の学校別・開示では弊害は起こっていないという考え方がある。
だがこれらの考え方は、社会的に不利な立場に置かれている子どもをはじめ、すべての子どもに「豊かな学力」を保障していく事を妨げる以外のなにものでもないのである。
改めて「豊かな学力」保障につながる道筋と取り組みを求める
われわれはこれまでの同和教育の実績をもとに、今こそ改めて「豊かな学力」保障につながる道筋とそのための取り組みを強く求めるものである。
すなわち、①子どもの低学力の背景には本人の頑張り以外に、家庭の経済社会文化的状況が大きく影響していること、②しかしこうした家庭の困難性を克服し学力保障を一定実現している学校(「力のある学校」)が存在していること、を重視すべきである。2007年度の全国学力調査結果でも、①就学援助率が高い学校ほど、低学力傾向にあること、②にもかかわらず、小学校で約200校、中学校で約70校(小中ともに就学援助率30%以上でかつ調査対象者10人以上)では、全国平均よりも高い結果を出していること、が明らかになっている。
こうした結果から求められていることは、①就学援助や奨学金はいうまでもなく、住宅・健康・福祉・仕事など総合行政による家庭支援が必要であること、②当事者のエンパワメントを図りながら「力のある学校」づくりを推進すること、である。
われわれは、全国学力・学習状況調査結果を使って学校や子ども・保護者を競争に駆りたてるいたずらな動きに断固反対するとともに、部落の子どもをはじめ全ての子どもの「豊かな学力」保障を実現していくことに邁進する決意である。
8月22日
部落解放同盟中央本部教育文化運動部