東京高裁による証拠開示勧告にあたっての声明
中央本部
2009年12月16日にひらかれた狭山事件第3次再審請求の3者協議で、東京高裁(門野博・裁判長)は、東京高検にたいして、証拠開示の勧告をおこなった。
前回の3者協議で、高裁は検察官に証拠開示についての意見を10月末までに提出するよう求めた。東京高検の検察官は、10月30日付けで、殺害現場とされた雑木林の血痕検査報告書については「存在しない」、その他の証拠については開示の必要性はなく、存否を明らかにする必要もないとする意見書を出していた。
これにたいして、弁護団は、検察官意見書の不当性と弁護団が求める証拠開示の必要性を明らかにする反論書を12月9日付けで提出していた。同時に指宿信・成城大学教授による再審における証拠開示の必要性を明らかにした鑑定意見書を東京高裁に提出し、開示勧告を強く求めていた。
今回、開示勧告された証拠は、殺害現場とされる雑木林の血痕検査を含む捜査書類、Oさんの証言にかかわる捜査書類、自白の信用性にかかわる取り調べ状況の資料、筆跡に関する資料など、弁護団がこれまで提出してきた新証拠にも関連し、狭山事件の重要な争点にかかわるものである。また、検察官が雑木林の血痕検査報告書について存在しないとしていることについては、捜査書類一切を開示勧告するとともに、存在しないとするならばきちとんとした説明をするよう求めた。
東京高検が、東京高裁の開示勧告におうじて、すみやかに証拠開示をおこなうよう強く求める。
10月から2か月間にわたり、石川一雄さん、早智子さんは、毎週のように、東京高裁前でマイクをもって証拠開示と事実調べの実施を訴えた。また、同宗連、部落解放中央共闘もそれぞれ独白に証拠開示と事実調べを求める要請行動をおこなった。狭山事件の再審を求める市民の会では、緊急に学者、文化人、ジャーナリストらに署名を呼びかけ、12月10日、108人の有識者の署名を庭山英雄・代表、鎌田慧・事務局長らが提出した。東京高裁にこれまで出された署名は107万筆をこえている。
これまでの狭山弁護団の新証拠の積み重ねと粘り強い証拠開示請求、こうした市民の声の高まり、各界の要請と石川さん本人の真剣な訴えが裁判所に届いたと受けとめたい。
おりしも、前日15日には、最高裁の決定によって布川事件の再審開始が確定した。布川事件でも、隠された目撃証言や取り調べ録音テープ、毛髪鑑定等の証拠開示が再審の大きなカギとなった。足利事件における取り調べテープの開示など、検察の証拠隠しが誤判原因となっていることは明らかである。
今回、開示勧告されず、いまだに隠されている重要な証拠資料は数多くある。東京高裁が、再審の理念と開示請求の必要性、意義をふまえて、ひきつづき、開示勧告をおこなうとともに1日も早く事実調べにはいることを求めたい。
今回の開示勧告は再審開始への第1歩ととらえ、気をひきしめて、さらに闘いを強化し、世論をひろげて、再審―無罪、石川さんの冤罪を晴らす最後の勝利まで闘おう。