「解放新聞」(2009.05.11-2418)
可視化法案を審議
参院法務委、本会議で可決
多くのえん罪事件で明らかになった警察などの取り調べの実態、国連の勧告などをふまえ、また、まもなくはじまる裁判員制度に向けても、早急に導入することが不可欠である取り調べの全面可視化などを求め、4月24日、「取調べ可視化法案(刑事訴訟法の一部を改正する法律案)」は、参議院本会議で賛成多数で可決、衆議院に送られた。
同法案は昨年、参議院で可決後、衆議院で廃案にされてしまった同名の法案を、今年4月3日、民主党と社会民主党が参議院に再提出した(2415号既報)。①ビデオなどの録画・録音による取り調べの可視化②録画などのない自白は証拠能力がない③検察官は手持ち証拠のリストを作成し開示、をおもな内容に段階的適用を定めている。
松岡参院議員が趣旨説明
本会議で可決される前日(4月23日)の参院・法務委員会の審議では、松岡徹・参院議員(中央書記長)は、法案発議者として趣旨説明。同じく発議者の前川清成、松野信夫・両参院議員とともに各党の議員5人の質問に答えて法案の必要性を浮き彫りにし、賛成多数で可決した。
同委員会での質問者は、民主、自民、公明、共産、社民の各党の議員5人(質問順)。採決では昨年と同様、白・公両党の議員が、えん罪を反省しない警察当局などとまるで癒着しているかのように法案反対を表明したが、民主、社民、共産の各党の賛成多数で可決した。政府からは森英介・法務大臣が、政府参考人としては警察庁刑事局長と法務省刑事局長が、それぞれ不当にも、全面可視化に反対する答弁をした。
民主党の松浦大悟・議員は、裁判員制度をうまく機能させるためには、証拠リスト開示、代用監獄制度の廃止などとともに、取り調べの可視化が欠かせないことを指摘し、質問。発議者の3議員から▽同法案は①えん罪をなくすため②裁判員制度の基礎的な前提条件、の2つの理由から不可欠▽「取り調べの機能を損なう」「真相を解明できな事態になる可能性がある」などと全面可視化に反対する答弁は、イギリス、オーストラリアなど先進地の事例に照らしても無根拠▽全面可視化は供述調書の任意性をめぐる水かけ論を防ぎ、裁判の長期化を防止、一部の録音・録画では逆効果、など答弁された。
社会民主党の近藤正道・議員も、▽全面可視化で「治安が悪化する」「真相解明ができなくなる」などとする政府答弁は、まったく実証的なデータに裏付けられていないことを再確認▽調書の任意性をめぐる法廷での水かけ論は裁判員に膨大な負担をかけるもので、許されない▽証拠リストの開示は被告人の弁護権を果たすための最低限の権利、なども再確認した。
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