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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド
見解

 

麻生副総理兼財務大臣の発言に対する抗議声明

2013年8月9日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂 繁之

   麻生太郎副総理兼財務大臣は、7月29日に東京都内でおこなわれたシンポジウムで「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね」と発言した。
  この発言に対して、中国・韓国、欧米諸国から強い批判が起こっている。また、
米国の代表的なユダヤ人人権団体は「どんなナチスの統治が学ぶに値するのか。人目を盗んで民主主義を駄目にすることか」との抗議声明が出されている。
  われわれは、この麻生発言は、参議院選挙後に安倍政権が画策している憲法改悪の狙いをあからさまにあらわした暴言であり、その撤回などで済まされる問題ではなく、麻生副総理兼財務大臣の即時辞任を求めるものである。
  ナチスの手口に学べというナチス賛美の麻生発言は、この間、世界各国から批判されてきた安倍首相の歴史認識と共通するものである。ナチスを率いたヒトラーは「国会放火事件」をでっち上げ、「全権委任法」を成立させ、当時民主的といわれたワイマール憲法を敗戦まで機能停止に追い込み、独裁体制のもとで第2次世界大戦を起こしたのである。さらにナチス時代には、ユダヤ人やロマに対する徹底的な差別と迫害のもとでの大量虐殺をはじめ、精神障害者や障害者に対する「断種」「安楽死」など多くの戦争犯罪を起こしてきた。これが麻生発言が賛美するナチスの手口である。
  戦後、当時の部落解放同盟の松本治一郎・中央執行委員長は、1956年3月にパリで開催された人種差別反対・ユダヤ排斥反対国際会議で、差別と迫害に抗して国際的な連帯活動の必要性を訴える挨拶をおこなった。まさに、あらゆる差別撤廃を求める取り組みをすすめるわれわれにとって、ナチスから学ぶ手口など何ひとつない。われわれが学ぶべきは、第2次世界大戦での非人道的な惨事への深い反省のもとに採択され、人権と平和を人類共通の課題とすることを謳った「世界人権宣言」の精神であり、今こそ平和主義・人権主義・民主主義を柱とする日本国憲法の具体化にむけた取り組みをすすめることこそが求められているのである。
  麻生副総理は「憲法改正については、落ち着いた議論をすることが極めて重要であるとの趣旨だった」として発言を撤回するとしている。しかし、ナチス賛美の発言に対する謝罪は一切ない。一方、この麻生発言を「ちょっと度のきついブラックジョークというところ」と唯一擁護しているのが、「従軍慰安婦発言」で国内外から強い批判を受けた日本維新の会の橋下徹・共同代表だけである。
  安倍政権は、憲法9条改悪で「戦争のできる国」づくりをすすめるために、集団的自衛権の政府解釈の変更を強行しようと内閣法制局長官を交代させる異例の人事交代をおこなった。
  われわれは、今回のナチス賛美の麻生発言に断固抗議するとともに、即時辞任を求める。また、安倍政権がすすめる憲法改悪を阻止する闘いを、今後とも広範な協働の取り組みとしてすすめ、人権と平和、民主主義の確立のためになおいっそう奮闘するものである。

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