「秘密保護法」成立に対する抗議声明
安倍政権は、衆議院での「秘密保護法案」の強行採決に続いて、5日の参議院特別委員会、6日の参議院本会議での強行採決という暴挙をおこない、希代の悪法を強引に成立させた。私たちは、この間、安倍政権による民主主義を無視した法案審議のすすめ万はもちろん、この「秘密保護法案」の危険な内容を指弾し、成立阻止に向けて、多くの市民団体や労働組合、文化人、学者、宗教者などとともに、全国的な反対運動にともにとりくんできた。
国内ばかりでなく、国連のピレイ人権高等弁務官が「憲法や国際人権法が保障する情報アクセス、表現の自由を守る適切な措置がないまま法制化を急ぐべきでない」「なにが秘密か不明確」と強調しているように、国際世論もこの法案への危険な内容に多くの懸念を表明している。しかも、自民党の石破幹事長は、国会周辺での市民の反対デモを「テロ行為と同じ」との暴言で、この法案が市民を監視し、人権を抑圧するためにあることをみずから暴露している。
「秘密保護法案」は、審議をすればするほど、この法案の本質があらわになり、反対世論が日増しに多くなっていた。何が秘密であるかも不明確、とにかく行政機関の長が「国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある」と判断すれば、その「秘密」は国会に提出しなくてもよいとされ、それを追及したり、アクセスすれば処罰の対象になる。まさに、市民を監視し、弾圧の対象にする、人権無視の法案である。今年の6月に公表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」では、「政府のもつ情報は、その国の市民のものである」とされているが、こうした国際的な基準にも反していることは明らかである。
かつて米軍のイラク軍事介入では、大量破壊兵器が隠匿されているという情報が根拠とされたが、いまでは、この情報がウソであったことは明らかになっている。しかもこのウソ情報の根拠さえいまだに検証されていない。このように、どのような情報でもいったん「秘密」と指定されてしまえば、誤った軍事行動の責任さえ放置されたままである。イラクに残ったのは、破壊された市民社会であり、犠牲になった多くの子どもや女性たちである。市民に知られたくない情報はすべて秘密にしてしまう。一部の権力者にとって、これほど都合の良い法律はない。
さらに問題なのは、基本的人権に関わる法案内容である。「秘密」を扱いそうな公務員、企業関係者への「適性評価」では、本人はもとより、家族、親族、同居人の犯罪や徽戒歴をはじめ、住所、国籍などの身元調査をおこなうとしている。さらに配偶者の「過去の国籍」まで調査項目にあげられている。このような差別身元調査を許すことはできない。
安倍政権は、経済成長路線を取りながら、格差拡大と貧困問題を深刻化させているが、経済発展を最優先とするなかで、あえて民主主義や人権を制限してもかまわないという政治を強行している。消費税増税や生活保護などの社会保障関係費を削減をする一方で、原発再稼働や原発の輸出に力を入れている。福島での原発事故もなんら解決できない現状で、まさに無責任きわまりない政府方針である。
このように、安倍政権は、民主主義を破壊し、みずからの政権に都合のいい社会制度をつくろうとしている。そのための「秘密保護法」である。この先にあるのは、安倍政権が悲願としている憲法改悪である。これはアジア諸国に大きな犠牲をもたらした侵略戦争へと突きすすんだ、かつてきた道である。
私たちは、この誤った同じ道を歩むことを拒否する。戦争へとつながる安倍政権のあらゆる策動に断固反対する。私たちは、「秘密保護法」の成立を許したものの、ともに反対運動にとりくんできたすべての力を結集し、あらためて人権と平和、民主主義の確立に向けた闘いを大きく前進させるために奮闘しよう。
2013年12月6日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂 繁之