狭山事件は事件発生から半世紀を超え、第3次再審闘争は重要な山場をむかえている。弁護団は、この1年間も多数の新証拠を提出した。証拠開示された上申書をもとにした筆跡鑑定、殺害方法に関する法医学者の鑑定書、腕時計のバンド穴についての検察官への反論、犯行に使われた手拭いが石川さんの家のものではないことを明らかにした新証拠、石川さん宅のカモイから発見された万年筆が被害者のものではないことを示す新証拠、そして、石川さんの自白が真実ではないことを明らかにする新証拠などである。これら無実の新証拠は、東京高検が開示した捜査書類などの証拠がカギとなっている。弁護団がこれまでに提出した新証拠は133点。今春にも取調べテープを分析した鑑定書などの新証拠を提出し、鑑定人尋問や現場検証などの事実調べを強く求める。第3次再審請求の闘いは、弁護団と石川さんの闘い、100万筆を超える署名に示された市民の声、学者、文化人、ジャーナリストらの支援によって、大きく前進した。2009年の東京高裁の証拠開示勧告を受けて、これまで130点をこえる証拠が開示された。しかし、この間、検察官は証拠開示に十分に応じていない。
狭山事件の確定有罪判決である寺尾判決からことし40年をむかえる。この40年間、鑑定人尋問など事実調べは一度もおこなわれていない。あまりに不当、不公平な裁判ではないか。わたしたちは、東京高裁に徹底した証拠開示と事実調べを強く求める。
石川一雄さんは冤罪におとしいれられ半世紀、32年もの獄中生活を強いられた。別件逮捕、代用監獄での長期の取調べ、弁護士接見の禁止、虚偽自白の強要という冤罪を生み出すあらゆる問題が見出される。被害者の遺体が被差別部落近くで発見されると、住民の中に「犯人は部落民」という偏見に満ちた声が広がり、マスコミは、別件逮捕された石川さんを犯人と決めつけ、「石川の住む特殊地区」「犯罪の温床4丁目部落」「環境が生んだ犯罪」と差別記事を掲載した。半世紀におよぶ冤罪を生み出した背景は、日本の刑事司法の人権を無視したありかたと部落差別である。わたしたちは、狭山事件の原点をふりかえり、狭山事件の再審を実現し、冤罪を必ず晴らすとともに、冤罪を生み出す日本社会を変えていくことを確認しなければならない。
ことし5月以降は、東京高裁第4刑事部が、弁護団提出の新証拠について、鑑定人尋問などの事実調べをおこなうかどうか、大きな山場となる。三者協議がひらかれ証拠開示が進展し新証拠が積み重ねられているいまが最大のチャンスである。
「一人は万人のために 万人は一人のために」を合言葉にわたしたちが半世紀以上も取り組んできた狭山の闘いの意義をふまえ、さらに、労働者、宗教者、文化人などとの幅広い共同闘争をすすめ、司法民主化の闘い、あらゆる冤罪との闘いと結びつけたとりくみを全国で展開する。映画「SAYAMA」の上映運動、パネル展をすすめ、半世紀におよぶ冤罪を市民やマスコミにアピールし、狭山闘争の勝利に向け、全力で取り組むことを誓い合う。全国各地で冤罪・狭山事件50年と再審開始を訴えるさまざまな闘いをすすめよう。
右 決議する。
2014年3月11日
部落解放同盟第71回全国大会
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