大 会 宣 言
人権と平和の危機である。敗戦後、これほど民主主義がないがしろにされ、戦争へと突きすすんでいく時代があっただろうか。安倍政権は、天皇の元首化と国防軍の創設に向けて、憲法の改悪をめざしている。靖国神社参拝など、かつての侵略戦争を正当化する誤った歴史認識のもとで、世界から孤立しているにもかかわらず、挑発的な言動を繰り返す。われわれは、国権主義、反人権主義の台頭に抗して、人権と平和、民主主義の確立に向けた闘いをすすめ、安倍政権の「戦争のできる国」づくりに向けた暴走を断じて許してはならない。
格差拡大社会のなかで、差別と貧困の問題は、ますます深刻化している。人間らしい生活が奪われ、聞くに堪えない侮蔑のことばが投げかけられ、差別排外主義が満ちあふれている。
しかし、われわれの闘いは、いつの時代でも、荊の道を歩み続けてきた。多くの先達たちの苦闘が、部落解放運動を大きく前進させてきたのだ。われわれもまた、嘲笑の刻印を投げ返し、この道を歩み続けなければならない。
部落解放運動をとりまく情況はきびしい。戸籍等大量不正取得や土地問い合わせ差別事件をはじめ、インターネット上での差別情報の氾濫、ヘイトスピーチなど、確信犯的な差別事件が続発している。われわれは、差別糾弾闘争を断固として闘い抜き、差別の実態を広く訴え、差別を許さない人権確立社会の創造に向けてとりくみをすすめよう。人権の法制度の確立、とくに人権侵害救済制度の創設は、なによりも急務の課題だ。これまでの闘いの到達点をしっかりと確認し、あらためて広範な闘いの陣形を再構築しよう。
50年におよぶ狭山の闘いは、いよいよ大きな山場を迎えている。今年こそ、再審を実現し、石川一雄さんの無罪をかちとろう。映画上映やパネル展など闘いは大きく拡がっている。検察の証拠隠しを許さず、証拠開示と事実調べを実現するために闘いを強化しよう。さらに「人権のまちづくり」運動の推進や「人権教育・啓発推進法」を活用し、同和・人権教育や部落問題解決に向けた行政施策の推進、反差別国際連帯活動など、今日的な部落解放運動の課題にもとりくんでいかなければならない。
部落解放運動は、差別を撤廃し、いのちと生活を守る闘いである。地域での要求を集約し、行政闘争を強化するとともに、あらためて人権・平和・環境を基軸にした政治の実現に向けた闘いをすすめよう。また、憲法改悪や軍事費の増大、社会保障費の削減と労働法制化改悪などに反対し、脱原発の闘いにも積極的にとりくもう。さらに、東日本大震災の復興に向けて継続した支援活動を強化しよう。
今日、荒廃し、閉塞化する社会のなかで、部落解放運動の果たす役割はますます重要になっている。差別排外主義を許さず、社会連帯をめざす協働・連帯の闘いをすすめよう。一方で、われわれの組織と運動の克服すべき課題は山積しているが、すすむべき道は明確だ。われわれは、部落差別撤廃にむけた広範なとりくみをすすめるとともに、人権と平和の確立、環境問題を共通の課題としながら、広範な協働の闘いを強化していかなければならない。
全国の兄弟姉妹に呼びかける。今こそ荊冠旗のもとに結集しよう。あの暗黒の時代においてなお、すべての希望を失わず、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれた「全国水平社創立宣言」の思想をあらためてわがものとし、部落解放-人間解放に向けて力強く団結し、「よき日」にむけてともに奮闘しよう。
以上 宣言する。
2014年3月11日
部落解放同盟第71回全国大会