「解放新聞」(2021.04.05-2986)
「全国部落調査」複刻版出版事件裁判(東京地裁、成田晋司・裁判長)が3月18日結審し、原告と被告が最終の意見陳述をした。被告Mは、部落差別が存在すると原告は主張するが、それと復刻版の出版禁止が関係あるのかとうそぶき、復刻版を活用し「洗脳から解放を」と居直った。あまりの悪質さに結審後、傍聴席から怒りの声があがった。判決は9月27日午後2時。
Mは、公務員全般の「同和」への恐怖感は尋常ではなく、部落問題は政府が国民の信頼を幾度となく裏切ったためにおきているとし、「人権問題ではなく利権問題」と強弁。裁判所の仮処分決定にたいする違反についても、部落の地名を書いた出版物を部落解放同盟は過去に何度も出しているのに、全国でなく都道府県や市区町村単位の地名リストにすればいいのかなどと主張した。そして、隣保館を「顔面に入れた入れ墨」とし、「自分の顔に入れ墨があると公言するのは人権侵害だと言っているようなもの」とたとえる悪質さも見せた。
また、自分が公表した復刻版が学術論文に使われているとラムザイヤー論文を証拠として提出。差別者同士が支え合う姿をみずから露呈した。(→同論文への中央本部見解)
原告側からは、片岡副委員長(糾弾闘争本部事務局長)と、弁護団を代表して指宿昭一弁護士が意見陳述した。(原告側の最終意見陳述は次号から連載予定)
片岡副委員長は、復刻版の公表自体が差別の助長であり、差別の材料をばらまく行為だとのべ、部落出身者の苦しみや、部落に居住しているか否かにかかわらず、差別に直面する恐怖や不安をかかえている現実を語った。また、部落差別をなくすための本人のカミングアウトと、同意・承諾もなく部落をさらす被告の行為とは別物と指摘。仮処分決定を無視する被告の悪質さも指摘し、一刻も早く出版差し止めとインターネットからの削除、損害賠償の決定を、と訴えた。
指宿弁護士は、復刻版が部落差別に利用されると知りながらの行為で、プライバシー権、名誉権、差別されない権利などの人格権を侵害しており、部落解放同盟の積みあげた差別撤廃のとりくみも水泡に帰すなど「業務」上の権利もはなはだしく侵害されている、と指摘。裁判所が被告らの行為を容認すれば同様の行為が可能になり、すべての人が平穏に社会生活を送れず、人間として尊厳を保てなくなると訴え、「水平社宣言」の「人の世に熱あれ、人間に光あれ」を引用し、「憲法に基づき、人間の尊厳が守られる社会を保つために、裁判官の良心にもとづく判決を求める」と結んだ。結審後、報告集会と記者会見をひらいた。
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