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大震災から5年、記憶を風化させず、被災地支援と原発再稼働反対にとりくもう

「解放新聞」(2016.03.07-2753)

 死者・行方不明者1万8000人の犠牲者を出した未曾有の大惨事・東日本大震災から5年目がくる。あれだけの犠牲者を出した災害でありながら、国民の記憶は年を追うごとに薄れ、政府の復興事業も戦争法やマイナス金利などの陰に隠れ、しだいに後景化している。
  復興事業は計画通りにすすまず、いまだに17万8000人が避難生活を余儀なくされており、6万3000人がプレハブの仮設住宅で5度目の冬を耐えている。津波で被害を受けた三陸沿岸部では、災害公営住宅などの復興事業がすすんでいるが、巨大な堤防や地盤かさ上げなどの土木事業ばかりが目立ち、肝心の住宅再建、雇用、医療、福祉など生活再建はすすんでいない。
  とくに生活の基本となる住宅再建のための災害公営住宅や高台への集団移転、かさ上げ(土地区画整理事業)の事業は大幅に遅れている。復興庁によると東北3県では戸数ベースでかさ上げの完了率はわずか4%にとどまり、公営住宅は43%、集団移転は計画している314地区(1万4200戸)のうち完了したのは53%にとどまる。復興工事が遅れているもっとも大きな原因は、作業員不足と資材の高騰だ。2020年の東京オリンピックが決まって工事業者が引き揚げはじめ、工事の遅れに追い打ちをかけている。町が復活するにはまだ相当の時間がかかりそうだ。その間に待ちきれない人びとがつぎつぎと町を捨てて出ていく。高台への集団移転事業では、せっかく高台に造成地ができて移転がはじまっても、途中で移転を断念する人が増えたため、入居のはじめから高齢者ばかりの限界集落になっている地区もみられる。集団移転を実施した3県17市町村144地区のうち、8市町村25地区が最初から65歳以上の高齢者ばかりの限界集落だという。
  公営住宅への入居や自力で家を建てて出ていく人が増えるいっぽう、仮設住宅にとり残された高齢者や低所得層の人びとは焦燥感をつのらせる。仮設住民の間には、将来の見通しが立たず精神的な焦りやストレスが広がっており、うつ病や引きこもり、アルコール依存症に追い込まれるケースが増えている。不安定な生活と環境から、子どもの不登校や児童虐待、DVもおきている。やっと災害公営住宅に入居できた地域では、隣近所に誰も知り合いがいないなかで、高齢者の孤立や引きこもりという新たな問題が生まれている。

 いっぽう、史上最悪の原発事故となった福島第1原発では、事故から5年目をむかえた現在でも廃炉作業の見通しが立っておらず、日日、高濃度の汚染水処理に追われている。
  安倍総理は福島原発事故の現状について、「30年後の廃炉に向けて廃炉作業は着実に進展している」と大見得を切った。しかし、いまだにメルトダウンした原子炉内の燃料棒の状態さえ把握できておらず、廃炉作業の見通しはまったく立っていないというのが実情だ。また、東電は昨年、第1原発の海側速水壁がようやく完成したと発表したが、裏返せばこれまで4年半、汚染水は垂れ流しの状態で海に流していたという恐ろしい話だ。しかし、速水壁が完成しても毎日400トンの地下水が流入してくるのを止めることができないため、「放射性物質の海洋流出が完全に止まるわけではない」(東京新聞)というのが現実であり、これで汚染水のダダ漏れ状態が止まるのかどうかは疑わしい。
  さらに、原発事故のあと、放射能で汚染された建物・土・草木などあらゆるものにたいし、人力によって除染作業が続けられてきたが、除染廃棄物は捨て場所がないため、田畑や公園などに野積みにされてきた。その数11万5000か所に約900万立方メートル、東京ドーム7杯分だ。それが住民の帰還を困難にしてきた。政府はこの除染廃棄物を集めて保管する中間貯蔵施設を大熊町と双葉町に建設することを決め、両町は大もめにもめたあと受け入れを決めた。しかし、中間貯蔵予定地の用地取得がほとんどすすまず、現時点で契約に応じたのは予定地の所有者2365人のうちのわずか2%(44人)にすぎない。
  ところで政府は昨年9月、「除染が完了し放射線量が下がって帰還できる状態になった」として、全域避難していた福島県内の7つの市町村のなかではじめて楢葉町の避難指示を解除した。解除にあたってはマスコミを動員して華ばなしく帰還の祝賀会を催したが、町に戻ったのは住民の5・7%にすぎない。住民の多くは、「放射線量が下がったといっても、道路や住宅の周辺だけの除染で、町の背後にある広大な山や河原などは除染されていない。住宅地でも場所によっては線量が高いところがあちこちにある。そんなところに子どもを連れて帰れない」という。これにたいして政府は、町外の避難者への補償の打ち切りをちらつかせ、なかば強制的に住民の帰還を誘導している。この問題に関連して、丸川珠代・環境大臣は2月はじめ、福島第1の原発事故で国が被曝線量の長期目標としている年間1ミリシーベルトについて、あろうことか「何の科学的根拠もない」と講演して、安倍政権の本音を明け透けに吐露した。現政権は、被曝者や避難者のことなど本気で心配していないことが、はしなくも暴露された発言だ。あきれてものもいえない。
  いずれにしても中間貯蔵地への廃棄物輸送が本格化すると、1日に最大1500台以上のトラックが走行すると予想される。当然、渋滞の発生や、事故による放射性物質の飛散などが懸念される。環境省は安全対策として、輸送車両を一元的に管理する計画を打ち出しているが、予定通りに機能するかどうかは不透明だ。渡辺利綱・大熊町長は、「町民みんなで帰町する」とくりかえしよびかけているが、戻りたいという町民は8・6%にとどまっている。

 政府は、事故の収束もおぼつかない福島第1を尻目に、川内原発(鹿児島)、高浜原発(福井)を再稼働させ、今年中に伊方原発(愛媛)を再稼働させると息巻いている。しかし、福島第1の絶望的な状況を考えたとき、かつまた関東大震災や東海・東南海巨大地震の予測を考えたとき、原発の再稼働などあり得ない。「まず再稼働ありき」、こんな無責任で危険な政策を容認してはならない。福島第1原発の事故は、原発は人類の手に負えない危険な存在であることをあらためて浮き彫りにしたものだ。
  これらの事実を直視し、大震災、原発事故の被災者への支援を継続し、脱原発にとりくむさまざまな団体と連帯して再稼働に反対し、原発廃止の運動をすすめていこう。


 

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