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マイナンバーでの人権侵害を防ぐためにも自治体に登録型本人通知制度を求めよう

「解放新聞」(2016.07.25-2772)

 昨年10月から住民票を有するすべての人に、これまでの住民票コードとは異なる新たな12桁の個人番号、また事業所にも13桁の法人番号がつけられ、本年1月1日から番号の利用と個人番号カードが交付されるマイナンバー制度(行政手続における特定個人を識別するための番号の利用等に関する法律)がスタートしている。
  住民票を持つ人全員、日本国民だけでなく、中長期の在留外国人や特別永住者に個人番号が届けられている。「通知カード」が届いた後、希望者には身分証明書として使えるICチップ内蔵の「個人番号カード」が、本人確認をおこなったうえで、任意でこの1月から発行されている。
  このマイナンバー制度の本格運用をめぐって、さまざまな問題点も惹起してきている。
  「通知カード」の未配達をはじめ、ICチップデータのプログラムミス・再発行など、日常的に混乱が連続して発生している。
  この制度は、2013年、社会保障と税の一体改革の一環として、住民登録した市民に一生変わらない番号をつけ、そのもとに「社会保障」「税」「災害」に関するもろもろの個人情報をコンピュータで一元的に国家が管理・利用する仕組みとして制定された。
  しかしながら、当初の社会保障の充実をはかるという政策目標はそぎ落とされ、個人番号の通知や制度の実施前の9月には銀行口座や検診情報、その他自治体の要望をふまえた利用範囲の拡充などの法改正が安保法案審議の混乱のなかでなされた。また昨年9月には財務省が突然、消費税10%引き上げ軽減策に個人番号カードを使用した還付金構想を発表するなど、当初、政府の説明になかった利用範囲が、あいついで拡大する形で打ち出されてきている。

 これらのことからも、まずは番号ありきで制度を導入し、その後に利用内容を民間活用なども含め際限なく広げていく政府の思惑が透けてみえる。今後、番号とカードがひとり歩きし、拡張・膨張を重ねることが危惧される。もし番号利用が民間にも拡大していけば、個人情報の流出被害のリスクは限りなく拡大する。
  2014年のベネッセの個人情報漏洩事件(2895万件とベネッセが推計)、2015年5月には日本年金機構から125万件もの個人情報が漏洩する事件の発生、また行政書士による戸籍等が大量に不正取得されたプライム事件といった情報漏洩や不正な個人情報の取得事件があとをたたない。公務員や民間会社従業員による過失や情報売買、不正なコンピュータシステムへのアクセスなどの事件は、どれだけセキュリティを強化しても、これら不正やハッカーとの「いたちごっこ」がくり返され、情報漏れの危惧は拭いきれない。
  また今後、日本では個人番号カードの券面に記載されている名前や性別に関することや、さらには個人番号を告知することそれ自体で起こる深刻な事態が予想される。LGBT(性的少数者)とりわけ性同一性障害の人が本人の意思に反し性別を記載した個人番号カードや通知カードを提示せざるをえなくなる恐れがあること、在日外国人が通名で勤務している場合には本名と通名併記のカードを提示せざるをえなくなること、DV被害を受けて避難している人の場合には居所を登録しなければ通知カードを加害者が受け取ることになり、被害者の個人番号を知った加害者に本人の意に反した行政手続きを勝手にされてしまう恐れがあるなどの問題がある。また、情報漏洩により個人のプライバシーが不正に暴かれ身元調査に利用されることも非常に危惧されるところである。あわせて、さまざまな理由で住民票の住所に住んでいない人、住民票がない人びと(ホームレスや多重債務者、DV被害者など)は、公的サービスから締め出されることにもなりかねない。

 住民基本台帳ネットワークシステムが市区町村の「自治事務」であることにたいし、共通番号制は「法定受託事務」=国の仕事と法律で定められており、国から強制的に付番される「強制付番」であるため、実質的にマイナンバーの番号そのものがつけられることは変えようがないのが現実である。
  自己情報コントロール権、人権の観点からも問題が多いマイナンバー制度であること、差別や人権侵害につながるセンシティブ情報が個人番号につながれること、漏洩や詐欺などの危険が大きく、個人番号を通じて個人情報が悪用される危険性があること、行政のみでなく民間でもあつかうことで漏洩や悪用の危険性がいっそう高まることなどの視点から、部落解放同盟としては、人権尊重・個人情報保護の立場から、マイナンバー制度には基本的に反対の立場をとる。
  しかし、個人情報保護法の改正により、人種、信条、社会的身分、病歴など、その取りあつかいによって差別や偏見、その他の不利益が生じるおそれがある、慎重な取りあっかいが求められる個人情報を「要配慮個人情報」と位置づけ、本人の意図しないところで第三者に提供されることがないように特別の規定が設けられたこと。さらに人権尊重・個人情報保護の観点から、現行法制度では番号利用を税、社会保障、災害関連でも法律や条例で定められた行政手続きにしか使用できないことになっていることの現状をふまえ、改正個人情報保護法や現行法制度の遵守を前提として、マイナンバー制度にたいして適切に現実対応していくことが必要であると考える。
  同時に、民間などへ番号活用を拡大させないこと、情報漏洩や人権侵害につながらないよう個人情報保護、セキュリティ、安全管理措置、職員研修・教育の徹底を当該自治体などに求めていかなければならない。また、人権侵害を未然に防いでいくためにも、戸籍や住民票を第三者が取得した場合に本人に通知する登録型本人通知制度について、未整備の市町村についてはその整備を強く求めていくとともに、すでに制度が整備されている市町村については、マイナンバー制度の周知の広報作業とあわせ、登録拡大に向け創意工夫した周知と啓発の実施を求め、登録者拡大を強く働きかけよう。


 

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