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解放保育運動の原点を確認し、子育て運動の輪を拡げていこう

「解放新聞」(2017.01.23-2795)

 2016年の流行語大賞トップ10に選ばれ、物議を醸している「保育園落ちた 日本死ね」。昨年2月、保育園の入所選考に落ちた母親がブログに書き込み、抗議デモや署名活動などに発展し、国会でも取りあげられるなど、待機児童問題が大きな社会問題として捉えられるようになった。
  2016年4月の待機児童数は前年より386人多い2万3553人と、2年連続の増加となった。とくに、0〜2歳児が2万446人と全体の86.8%を占めている。また、現状では待機児童の解釈が自治体によって異なっているため、待機児童の全体像が見えにくくなっているなどの声から、厚労省は今回初めて「隠れ待機児童数」を発表した。隠れ待機児童は@入所できる認可保育所があるが、特定の保育所を希望している
A認証保育所などの自治体が補助する認可外保育所を利用しているB保育所に入れず育児休業を延長したC保護者が求職活動をやめたなどのケースにあてはまる待機児童数とされ、6万7354人にのぼった。両者を合わせると9万人をこえる待機児童がいる実態が明らかになった。女性の就業率向上による共働き世帯の増加や都市部の人口増などを背景に入所申し込みが増えたと分析している。厚労省は、待機児童について正確に実態を把握するために待機児童の定義の見直しについての検討会を立ち上げ、今年度内に全国統一の新基準を設けるとしている。見直しによって待機児童数が膨らむ可能性は大きく、安倍政権が掲げる2017年度末までの「待機児童ゼロ」達成はきわめて厳しい。

 このような状況のなか、厚労省は昨年3月末、認可保育所の受け入れ拡大、小規模保育施設の定員引き上げといった自治体に基準の緩和を促す待機児童解消に向けた緊急対策を打ち出した。9月には保育士確保のための基本給の引き上げ、夜間の保育サービスの拡充や入園予約制の導入などの追加対策が公表された。また、子ども・子育て支援新制度では市町村が実施主体となっているにもかかわらず、仕事・子育て両立支援事業の新設として、子ども・子育て支援法の一部を改定し、市町村行政の関与の仕組みもなく、届け出だけで開設できる認可外保育施設である事業所内保育施設に助成金を出す企業主導型保育事業を今年4月から施行し、5万人分の受け皿を確保するとしている。仕事と子育ての両立や待機児童解消に、事業所内保育所は大きな役割をはたしているが、安全性の確認が十分ではない施設が国の後押しで拡大していくことが懸念されている。
  新制度は、すべての子ども・子育て家庭を対象に、幼児教育、保育、家庭の子育て支援の量の拡充や質の向上をすすめるとしてスタートした。2年が経過しようとしている現在、保育の量の拡充が最優先され、質の改善・向上は後回しにされているのが実態だ。次つぎと打ち出される対策は、柔軟な保育、多様な保育サービスといった言葉のもと、安心・安全を置き去りにした安易な規制緩和や基準の切り下げを容認するなどの受け皿のみを拡大するものとなっている。支援の量の拡大・質の向上には、保育士不足の問題を解決していかなければならない。そのためにも、保育士の処遇改善は必要不可欠であり、しっかりとした財源の確保を求めていく必要がある。自治労や全人教などとの連携を強化し、すべての子どもの豊かな育ちを保障する保育政策の実現に向けたとりくみをすすめなければならない。

 2018年に「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」の改定が予定されており、昨年8月「保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ」が公表された。現行の保育指針は2008年に改定され、2009年度に施行された。この間、2015年度から子ども・子育て支援新制度が施行されたこと、0〜2歳児を中心に保育所利用児童数が大きく増加していること、子育て世帯での子育ての負担や不安、孤立感が高まるなかで児童虐待件数が増加していることなどの保育をめぐる状況が大きく変化したことに対応するための改定で、今年度末を目処に最終的な報告をとりまとめるとしている。
  今回の中間とりまとめでは、改定の主要な方向性や新指針の章構成などが中心で、方向性として@乳児・1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実A保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけB子どもの育ちをめぐる環境の変化をふまえた健康および安全の記載の見直しC保護者・家庭および地域と連携した子育て支援の必要性D職員の資質・専門性の向上、の5点が示された。各項目の内容には、近い将来「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」の一本化へ向けた理念や原理の統一をめざそうとしているようにとれる部分もある。今後の動向をしっかり把握し、家庭や地域、保育所・幼稚園、こども園、小・中学校、行政が一体となって、各地の子どもの状況や課題を共有し、保育内容の豊富化をめざして学習・検討・議論していく必要がある。

 保育制度の転換期にあるなか、安倍政権は憲法改悪の策動を強め、人権や平和が脅かされている。1月初旬、安倍首相は、「今年は日本国憲法施行70年の節目の年。新しい国づくりに向けて、さまざまな課題に挑戦していきたい」と改憲への意欲を語った。憲法違反の「戦争法」にもとづいた南スーダンへの自衛隊派兵、国連安全保障理事会の南スーダンにたいする武器の輸出などを禁ずる制裁決議案の採決を棄権したことでも明らかなように、「新しい国づくり」とは「戦争のできる国」づくりのことである。こうした戦争への道をひらくと同時にすすめられる社会保障制度や労働法制の改悪などは、貧困と格差をいっそう深刻化させている。社会問題ともなっている子どもの貧困問題や、児童相談所の対応した件数が10万件をこえ、25年連続増加となった児童虐待の問題など、子どものいのちと人権が脅かされている今こそ、子どもの生きる権利とその成長を保障するとりくみとしてすすめてきた解放保育運動が重要だ。
  2月25、26日の2日間、第39回全国人権保育研究集会を京都で開催する。1日目の記念行事では、善法保育所と北木幡保育所の園児による歌と踊り、河原支部の中学生・高校生を中心に構成された「蛍」による太鼓演奏。全体会では、京都での「同和」保育運動のあゆみの報告と、昨年から分科会の助言者として協力いただいている、子どもと育ち総合研究所の宍戸信子・主任研究員の「あそびがつなぐこどもの明日」と題した記念講演を予定している。2日目の分科会では、昨年に引き続き、解放保育・人権保育運動の歴史に学び、その継承・発展を目的とした第9分科会「人権保育入門」を設け、報告と京都の実行委員会や保育士、保護者の代表4人をパネリストにパネルディスカッションをおこなう。
  18年ぶり2回目の開催となる京都の地で、解放保育・人権保育運動の原点を確認するとともに、全国各地の実践に学び、議論と交流を深め、解放保育・人権保育運動の活性化をめざし、家庭、地域、保育所や幼稚園・こども園、小・中学校との連携をすすめ、すべての子どもの育ちを豊かに支えていく子育て運動の輪を拡げていこう。


 

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