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居直る鳥取ループ糾弾の裁判闘争に結集しよう

「解放新聞」(2017.11.27-2836)

 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の第7回口頭弁論が12月25日に東京地裁でひらかれる。部落差別を助長・拡散する被告(鳥取ループ・示現舎・M)を徹底的に糾弾するため、全国から東京地裁での裁判に参加しよう。

 昨年4月に提訴してから、鳥取ループの裁判はすでに6回の口頭弁論がおこなわれた。6回にわたる裁判で、原告である部落解放同盟の主張と被告・鳥取ループ・Mの主張はほぼ出そろった。われわれ原告側の主張は一貫して明確だ。全国部落調査の復刻版の出版やインターネットへの掲載は、文字通り部落差別を拡散・助長するものだから即刻出版を禁止し、ネットへの掲載を削除せよというものである。これにたいしてMは、おもにつぎのような主張をくり返し、復刻版の出版やインターネットへの掲載を正当化してきた。

 1点目は、部落解放同盟は原告の資格がないという主張だ。Mは、「被差別部落出身者という身分は、法律上存在していないし、また社会的にも学術的にも定義が定まっていない」「従って解放同盟らが被差別部落出身者であることはあり得ない」などと主張する。

 2点目は、部落解放同盟は機関誌や図書で部落を何度も公表しているのに、いまさら禁止するのはおかしいという主張だ。Mは、「「部落」あるいは「同和地区」の場所は、いままで何度も出版物などで公表されてきた。それらの多くは、行政機関や原告解放同盟の関係団体によるものである」といっている。

 3点目は、「全国部落調査」に地名が出ていても差別の対象にはならないという主張だ。Mは、「部落の地名の公表等により実際に権利侵害を受けたというが、そのような事実は存在しない」と主張する。

 4点目は、部落解放同盟は「寝た子を起こす」ことを奨励してきたという主張だ。Mは「同和地区名を明らかにすることは、組坂繁之が主張した「寝た子を起こす」ことに他ならない」と揶揄(やゆ)している。

 5点目は、隣保館や集会所が目印になっており、隠してもすぐわかる、という主張だ。Mは、「同和対策事業で作られた隣保館や教育集会所など施設が同和地区の目印になっている」「すぐに分かるのだから隠しても無駄だ」と開き直っている。

 6点目は、「同和地区Wiki」は運営管理していないし、「部落解放同盟関係人物一覧」は作っていないという主張だ。Mは、「「同和地区・みんな」ドメイン(co.jpや.comといったホームページの住所のようなもの)を所有していただけであり、運営管理していた事実はない」「「解放同盟人物一覧」なるものが、どうやって作成されたのか被告らは関知しないところである」と逃げている。

 7点目は、部落問題の解決のために公表することが必要だという主張だ。Mは「従って、部落に関する情報を徹底的に暴露して拡散し、部落問題に関する知識や議論の不平等をなくし、誰が「部落出身者」なのかという設定がいかにデタラメであるかを明らかにし、問題を「閉じ込める」のではなくて「希釈」することにより解決するしかないというのが、いかに部落問題を解決するかという問題についての被告等の結論である」と開き直っている。

 Mの主張にはいくつか特徴がみられる。ひとつは部落差別そのものを否定していることだ。彼は「部落地名総鑑」について、「歴史的資料で差別図書ではない」「部落地名総鑑で被害は出ていない」という。また、戸籍不正取得事件(プライム事件)についても「どのように部落問題と関係しているのか明らかでない」「プライム事件は差別ではない」と差別性を否定している。

 最近、市町村の窓口に同和地区を教えてほしいという、いわゆる「同和地区の問い合わせ」が増えているが、これにたいしても「そもそも行政に情報提供を求めることは国民の権利」と問い合わせを正当化している。また、結婚差別にたいしても、「憲法で「両性の合意」のみが要件とされている以上、そこに部落差別が関係していても本人の判断に他人が介入することができない」とそれを正当化している。

 もうひとつの特徴は、同和行政を頭から否定している点だ。統一応募用紙や公正採用選考人権啓発推進員制度にたいしては、「「部落問題解消のための活動をしていますよ」という言い訳作りにすぎない」といい、これらの制度は「徹底的に破壊され、冒涜(ぼうとく)されてしかるべきである」とまでいっている。Mは文字通り差別の確信犯であり、煽動者である。

 ところで、この裁判に関連して横浜地裁相模原支部は7月11日、Mの異議申立を却下し、被告(M)の不動産(マンション)の仮差押えをふたたび認可する決定をおこなった。

 この裁判では、Mが、「部落解放同盟人物一覧」を掲載していないと逃げを打ったことが一つの争点になった。しかし、裁判所は「少なくとも債務者(M)は、本件人物一覧表等が掲載された「同和地区wiki」の記事について、これを削除したり、データの掲載停止を行うことが可能な権限を有していることは明らかであって、債務者(M)は「同和地区Wiki」の管理者であると認められる」とのべ、「管理者としての削除権限を有していながらも、この間「同和地区Wiki」から本件人物一覧表の削除をしなかったということは、結局のところこの間の債務者が、みずから本件人物一覧表を掲載していたと同視できるものであって、少なくともその管理者として、その掲載内容によって生じた損害に対する賠償責任を生じ得るものというべきである」とのべてMの関与を認め、賠償責任があるとした。

 また、権利侵害はないというMの主張にたいして横浜地裁相模原支部の裁判官は、「全国部落調査の内容を、不特定多数の者に広く知らしめようとする行為は、債務者に差別助長の意図があるか否かにかかわらず、実際には差別意識の形成、増長、承継を助長する結果となるであろうことは明らかであるし、そうなれば、差別意識や差別的言動を撲滅しようとしてきた国家やこれに添う活動をしてきた個人や組織の長年の努力を、大きく損なうこととなりかねない」と指摘し、損害賠償請求権を認めた。この相模原支部の決定は重要な意義をもっている。今後の裁判のなかで十分に生かされるべきだ。

 鳥取ループの「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は、次回の口頭弁論で双方の主張が終了して、来年度の第8回口頭弁論から証人尋問に移る予定だ。

 現在、原告249人の意見陳述書の作成作業が続いているが、弁護団はこのなかから複数の原告の証人申請をおこない、証人台に立って発言する機会をつくるよう裁判所に申請する予定だ。証人尋問では、Mのおこなっている行為がいかに極悪非道の所業であるか、いかに部落差別を拡散助長するものかを裁判官に訴えることになる。また、原告がみずからの被差別体験を語り、裁判官に部落差別の深刻な実態を訴えることも重要だ。

 裁判はいよいよ核心に迫る段階に入る。「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は、全国の部落出身者を差別から守る闘いであり、全国の部落差別をなくそうと努力してきた部落解放同盟はもちろん、国や地方自治体、企業や宗教団体、労働組合などの長年の成果を守る闘いだ。12月25日の第7回口頭弁論に全国から結集しよう。



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