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部落差別を拡散する鳥取ループ・示現舎の「部落探訪」にたいする糾弾の闘いをすすめよう

「解放新聞」(2018.11.12-2882)

 部落解放同盟は、「全国部落調査」復刻版の出版差し止めとインターネット上での掲載削除を求めて東京地裁で裁判闘争にとりくんでいるが、鳥取ループ・示現舎はそれに挑戦するように「部落探訪」と称してインターネットに全国各地の被差別部落を掲載し、部落差別の助長・拡散行為をエスカレートさせている。裁判闘争のとりくみとともに、「部落探訪」糾弾の闘いを全力ですすめよう。

 「部落探訪」とは、全国各地の被差別部落に潜入し、所在地や特徴が一目でわかるような写真をインターネット上に大量に掲載したもので、その数は2018年11月現在、18都府県83か所におよぶ。鳥取ループ・示現舎は、2015年からこの「部落探訪」を掲載しているが、われわれの裁判闘争以降、掲載数を増やし、2018年だけでも、すでに41か所をインターネット上に晒している。

 「部落探訪」は、一見すると、街の紹介のような装いをとっているが、その本質は被差別部落の所在地の暴露そのものである。最近掲載した静岡県S地区では、2か所の被差別部落の町名、番地、住宅の写真、世帯数などとあわせて、地区が特定できるように電柱の地番表示や地区内にある神社、理容室、雑貨屋の写真も掲載している。また別の地区では、隣保館や教育集会所の看板、公園や寺院、墓地なども掲載している。とくに寺院の場合は宗派まで書き込み、駐車している車両番号まで判明できる写真もある。

 「部落探訪」の特徴の一つは、一見するとテレビ番組の「ぶらり旅」や「ぶらり街歩き」などを装い、ゲーム感覚で「部落探し」への興味を誘うような悪質な情報操作をおこなっていることである。実際、「部落探訪」は、隣保館や神社だけでなく食堂のメニューなどを掲載して、面白半分に被差別部落にいくことを推奨している。

 しかし、「部落探訪」の本質は、あくまでもどこが被差別部落なのかを晒す点におかれている。「部落探訪」は、地区が特定できるような写真や、どのような名前が部落民であるのかを掲載しており、それが「部落探訪」の目的であることは明らかである。

 鳥取ループ・示現舎が「部落探訪」で「紹介」している「街」は、たんなる町や地域ではないし、ましてや観光地でもない。被差別部落として差別されてきた地区であり、「部落探訪」に掲載されることによって、結婚差別や就職差別などを受ける地区なのである。まさに「差別したい人はお手伝いしますよ」という差別煽動のための所在地の暴露にほかならない。実際、「部落探訪」には、返信欄に「私は近隣住人です。あそこが同和地区というのははじめて知りました」などと書き込んだり、追加情報として地区の代表的な姓の書き込みがされているように、差別が助長・拡散されているのである。

 また、「部落探訪」が悪質なのは、鳥取ループ・示現舎のM自身が書き込んでいるように、「全国部落調査」を利用して、これまで同和対策事業を実施してこなかった地区や未組織の地区までも晒していることである。それらの地区では、部落出身であることを隠していたり、自分が部落出身であることを知らないで生きている人がいるのである。しかし、「部落探訪」によって、そうした人たちも差別の対象とされているのである。

 実際、「全国部落調査」や「部落探訪」を見て、市町村の窓口に「〇〇地区は、本当に同和地区なのか」という問い合わせが増えているし、こうした問い合わせのなかには「自分が部落の出身であるのか、教えてほしい」(長野県須坂市)などの問い合わせがあったことも報告されている。「部落探訪」は、それまで部落出身であることを隠してきた人や部落出身であることを知らないで生きている人たちもふくめて、興味本位の悪質な差別の対象としているのである。

 この「部落探訪」にたいして、全国で抗議行動が展開されている。東京都連は、8月の東京法務局交渉で、鳥取ループ・示現舍の「部落探訪」の早急な削除などを求めた「要望書」を提出した。交渉のなかで、東京法務局は「個別の事案についての見解に関しては答えを差し控える」「一般にインターネット上で不当な差別的取り扱いを助長誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘するなどの内容の情報を認知した場合は、人権侵犯事件として立件のうえ、その情報の削除をプロバイダ等に要請するなど適切な対応につとめる」と「部落探訪」が差別情報であることさえ認めない回答をしている。

 また、三重県連は、三重県行政に削除を求めるとりくみをすすめるように要請書を提出し、この要請を受けて、三重県は、9月に津地方法務局を訪問して、局長に削除を申し入れた。さらに三重県は総務省を訪問、総合通信基盤局長に「インターネット上の人権侵害等への対応強化を求める要望書」を手渡した。「要望書」では、「インターネット上の人権侵害等に対応するための法整備」「プロバイダの自主的取組に対する支援、促進の充実強化」「海外のプロバイダを介した人権侵害等への対応」「インターネット上の人権侵害等に関する啓発活動の充実」の4項目を具体的に要請し、とくに「プロバイダの自主的取組に対する支援」では、拡散を防ぐために、検索エンジンを運営するプロバイダ事業者がこうしたとりくみをすすめることができるように、ガイドラインの作成の必要性を強調している。しかし、こうした全国的なとりくみにもかかわらず、法務省は何らの対応もせず、「部落探訪」は削除されることなく、鳥取ループ・示現舍は更新を続けている。

 このように「部落探訪」は、インターネットに関連した差別情報を規制する法律が整備されていない現状のなかで削除されることなく放置されているが、一方で「部落探訪」は「全国部落調査」を利用して続けられており、仮処分で所在地暴露を禁止した裁判所決定を無視する鳥取ループ・示現舎の悪質な差別行為である。こうした差別行為を法務省が放置することは絶対に許されない。「部落差別解消推進法」の具体化に向けた法務省の消極的な姿勢もふくめて、徹底的に法務省を追及していかなければならない。

 鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査」復刻版の出版、インターネット上の掲載禁止を求めた裁判闘争は、証人尋問がおこなわれる予定であり、来年の春以降、結審となるが、裁判闘争と結合させて、この鳥取ループ・示現舎による「部落探訪」糾弾の闘いをすすめよう。都府県連のとりくみとして、地方法務局にたいする削除要請を厳しく迫るとともに、自治体にも、「部落探訪」が悪質な差別情報であることを明確にさせ、削除に向けた具体的な行動をおこなうよう強く求めていこう。

 

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