自民党、公明党は、7月15日の衆議院安保特別委員会で、野党の強い反対のなか、「戦争法案」(安保関連法案)を強行採決した。「戦争法案」は、さまざまな報道機関の世論調査でも反対が上回り、委員会でも審議を重ねるほどにこの法案の危険性が明らかになり、安倍首相自身も委員会答弁で「国民の理解が十分でない」と認めており、法案に対する全国的な反対運動が日増しに大きく盛り上がっていることを全く無視した暴挙である。私たちは、この「戦争法案」が、昨年7月の集団的自衛権容認という憲法違反の閣議決定にもとづくものであり、戦後、平和憲法のもとで築き上げてきた日本の平和と民主主義を根幹から破壊する最悪の法案であるとして、断固反対する闘いに取り組んできた。今回の安倍政権による強行採決は、こうした広範な闘いに追い詰められたものであり、「戦後レジーム」からの脱却をめざす安倍政権の反人権主義の本質を露呈したものである。
「戦争法案」は、米国に一方的に追従し、切れ目のない安全保障の対応として、自衛隊の戦争参加のための海外派兵をすすめるものであり、委員会審議で明らかになったように、「後方支援」も「武力行使」も、すべて戦争行為である。まさに戦後70年の間、決して「殺さない」「殺されない」として、世界平和に貢献してきた平和憲法を破壊するものであり、「安全保障環境の変化」という安倍首相が強調する法制の必要性について、説得力のある説明は全くない。「戦争法案」では、政権の恣意的な判断のみが自衛隊の海外派兵の根拠であり、委員会審議でもその曖昧性と矛盾が明らかになった。にもかかわらず、「夏までに法案を成立させる」という米国との約束を最優先させるためだけの強行採決である。この暴挙を決して許さず、「戦争法案」の廃案をめざして、さらに広範な反対運動と安倍政権退陣に向けた闘いをすすめよう。
この間の「戦争をする国」づくりをめざした戦前回帰の政治がすすめられるなかで、人権問題が大きく後退している。とくにヘイトスピーチのように、公然と差別排外主義が台頭してきている。こうした社会情況は、深刻化する格差拡大社会のなかで、社会保障費の削減や労働法制の改悪、原発の再稼働推進など、安倍政権がすすめる人権無視の政策と無縁ではない。
戦争は、最大の差別であり人権侵害である。私たちは、戦前の歴史的教訓をふまえ、安倍政権と対決し、戦争反対の広範な闘いをすすめなければならない。人類が大きな犠牲の上にかちとった人権と平和という、かけがえのないものを次代に引き継ぐために、今回の「戦争法案」強行採決の暴挙を許さず、人権と平和の確立、民主主義の実現に向けて全力で闘い抜こう。
2015年7月15日
部落解放同盟中央本部