55年前のきょう、警察は当時24歳だった石川一雄さんを別件で逮捕し、女子高生殺害の取調べを連日おこなった。警察、検察は別件逮捕、再逮捕というやりかたで1ヵ月以上におよぶ厳しい取調べを続けた。無実を叫ぶ石川さんに、弁護士や家族との接見を禁止し、石川さん一人だけを閉じ込めた川越警察署分室の取調室で、手錠・腰縄をつけたまま、3人の警察官が取り調べ、兄を逮捕すると脅してウソの自白に追い込んだ。「脅迫状を書いたことは議論の余地がない」「供述義務がある」などと強引に自白に追い込んだのだ。そして、犯人でないがゆえに犯行体験を何も語れない石川さんを警察官らが誘導し、ウソの自白がつくられていったことが証拠開示された取調べ録音テープによって明らかになった。55年前に無実の石川さんが冤罪におとしいれられていった真相が、証拠開示と弁護団が提出した新証拠によって、つぎつぎと暴かれている。
ことし1月には狭山弁護団はコンピュータによる筆跡鑑定である福江鑑定を提出した。福江鑑定は、コンピュータを使って、脅迫状と石川さんの書いた文書の文字の違いを客観的に計測し、統計的に調べた結果、99.9%別人の筆跡であることを明らかにしている。
さらに、取調べ録音テープの筆記場面を分析し、当時の石川さんが部落差別によって教育を受けられなかった非識字者であり、脅迫状を書けたはずはないことを明らかにした鑑定書も提出されている。石川さんが脅迫状を書いていないことは石川さんが犯人ではないことを直接証明している。脅迫状の筆跡との一致を証拠の主軸とした有罪判決は完全に崩れている。東京高裁は、鑑定人尋問をおこない再審を開始すべきである。
狭山弁護団は、下山鑑定によって有罪証拠の万年筆が被害者のものではないことを科学的に明らかにした。そもそも2度の徹底した警察の家宅捜索の後、3回目の捜索でお勝手入り口のカモイから発見されるという経過じたいが不自然だ。証拠開示された取調べ録音テープを分析し、石川さんの自白の「無知の暴露」「非体験性」を明らかにした心理学者の鑑定も提出されている。第3次再審請求で提出された新証拠によって石川さんの無実は明らかだ。
足利事件や布川事件、東住吉事件など再審無罪となった冤罪の教訓は、誤判から無実の人を救済するために証拠開示と事実調べが不可欠であるということである。しかし、狭山事件では石川さんが無実を叫び続け、第1次、第2次再審でも多くの新証拠が提出されてきたにもかかわらず、寺尾判決以来43年以上、一度も事実調べがおこなわれていない。証拠開示によって新事実が発見され、科学的な新証拠が多数出されている第3次再審請求において、今度こそ事実調べがおこなわれなければならない。
わたしたちは、狭山事件の第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部の後藤眞理子裁判長が、鑑定人尋問などの事実調べをおこなうよう強く求める。
わたしたちは、袴田事件の一日も早い再審開始と無罪判決を求める。検察官の即時抗告を棄却する決定に対して検察が特別抗告しないよう強く求める。
再審における証拠開示を保障し、再審開始に対する検察官の抗告を禁止することをもりこんだ再審法の改正を求める。そして、映画「獄友」の上映運動をすすめ、冤罪の実態と狭山55年をアピールするとともに、すべての無実を叫ぶ人たちの再審開始を求め、冤罪被害者や支援運動と連帯し、冤罪根絶にむけた司法改革を実現する闘いを全力で進める。
一日も早く石川さんの「みえない手錠」をはずすために狭山事件の再審を実現しよう!
2018年5月23日
狭山事件の再審を求める市民集会 参加者一同