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6月16日、内閣提出の「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」とこれについての自民党、日本維新の会、参政党が提出した修正案が衆議院本会議で可決され、6月23日から参議院法務委員会での審議が始まった。この法律案は、いわゆる「再審法改正」について、法制審議会の答申にもとづき法務省が作成した案に対して自民党内で批判が続出し、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)を原則禁止するという条文が入れられるなどの修正がされ、閣議決定されて政府提出法案として国会に提出されたものである。
そもそも法制審の答申については、再審開始に対する検察官の抗告が維持されているだけでなく、再審請求人・弁護人への証拠開示が十分保障されていないことや、証拠の目的外使用の禁止、再審の門前払いとも言うべき事前審査手続きがあらたに加えられたことなど、再審手続きの改悪になるとして、冤(えん)罪被害者、当事者はもとより、日本弁護士連合会、元裁判官、刑事法研究者から問題点の指摘、強い批判がなされた。政府案は、自民党内の審査で法務省案が修正され、再審開始決定に対する検察官の抗告を原則禁止するとの規定が本則に盛り込まれた点で、大きな改正として評価できるが、その他の問題点を残したまま閣法として提出され衆議院を通過した。一方で、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」がまとめた再審法改正法案(検察官抗告の全面禁止、請求人への直接証拠開示命令)も野党3党(中道改革連合、チームみらい、共産党)によって議員立法案として国会に提出されていたが否決され、また、政府案の問題点について、参考人からの意見もふまえて、中道改革連合や国民民主党から、検察官保管証拠の一覧表を再審請求人側へ開示する規定を加えることなど具体的な修正案も提出されたが否決されたことは極めて残念である。
今回衆議院を通過した法律案については、まず、裁判所による証拠提出命令であり、再審請求人・弁護人への幅広い証拠開示を保証するものではないこと、裁判所が再審請求人・弁護人への証拠開示を命じる権限が条文に明記されていないこと、検察官がどのような証拠を持っているのか再審請求人・弁護人がわかるようにするための証拠一覧表(証拠リスト)の提出・交付が認められていないことなど、証拠開示に関して多くの問題点を残している。
また、証拠の目的外使用禁止規定が設けられ、開示証拠を支援者や報道機関に提供し、冤罪救済に役立て、冤罪・誤判の真相と原因を社会的に共有することが困難になるとの問題点や、再審開始決定に対して検察官が抗告できる例外規定が設けられ、「検察官抗告の原則禁止」が骨抜きにされかねないとの懸念も払しょくされていない。
とりわけ、再審請求人に対する幅広い証拠開示の保障は、現に冤罪を訴え再審をたたかい、また再審を準備している冤罪当事者・弁護人にとっては必要・不可欠の課題である。そもそも無罪を言い渡すべき新証拠の発見・提出を再審請求人に求める現行制度のもとで、再審を求める冤罪者の権利として証拠開示を保障する法制度は、公平・公正な裁判を担保するために当然である。再審は、誤判から無実の人を救うという、人権の制度であり、証拠開示はその生命線である。
私たちが支援を続けてきた冤罪・狭山事件では、検察官による証拠開示が遅れ、第3次再審請求だけでも19年もの長い時間がかかり、石川一雄さんは62年も無実を訴え続けながら、冤罪が晴れぬまま昨年3月に86歳で亡くなった。この現実を変えていくことこそが、再審法改正に求められている。この間再審が開始され雪冤が果たされた袴田事件、福井事件や再審開始が確定した日野町事件などの冤罪の現実が示す法の不備を変え、誤判からの確実で迅速な救済を実現することこそが、再審法改正の原点、立法の目的のはずである。国会は、石川一雄さん、早智子さんをはじめ、冤罪被害者、当事者の声に真摯に耳をかたむけ、真に冤罪被害者のための再審法改正を実現すべきである。そのために、衆議院で可決された法律案(及びその修正案)は極めて不十分であり、参議院での法案審議において、議連法案の内容(検察官抗告の全面禁止、再審請求人・弁護人に対する幅広い証拠開示の保障、期日の指定など)もふまえて、政府提出法案の問題点が徹底的に審議、必要な修正がなされるよう強く求めたい。
私たちは、石川一雄さんの遺志を受け継いで狭山事件の第4次再審請求をたたかう石川早智子さん、弁護団とともに、狭山事件の再審開始、石川一雄さんの無罪判決まで全力でたたかうとともに、あらゆる冤罪をなくし、誤判からのすみやかな救済を求めて、人質司法の廃止など冤罪防止のための司法改革、検察官の抗告の全面禁止、再審請求人への証拠開示の保障など、真に冤罪被害者のための再審法改正の実現をめざして、今後も全力で取り組みをすすめることを表明する。
2026年6月23日
部落解放同盟中央執行委員長
西島 藤彦