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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド

2010年度(第67期)一般運動方針

《第Ⅰ部 基調方針》

一 部落解放運動をめぐる情勢のおもな特徴

 1 人権をめぐる情勢
 ① 急激な景気後退、失業者の増大のなかで、悪質な差別事件や人権侵害が多発しています。昨年12月4日、京都市にある京都朝鮮第1初級学校(小学校)に、「在日特権を許さない市民の会」を名乗るメンバー10数人が押しかけ、大音量の拡声器で差別的な暴言を吐き続け、授業中の児童や教員を恫喝・脅迫するという悪質な事件が生起しています。このような差別と人権侵害が強まるなかで、1日も早い差別や人権侵害の被害者の効果的な救済のための法整備と、これをふまえた差別禁止法の制定が求められています。
 ② その点では、千葉法務大臣が、大臣就任の記者会見で、内閣府のもとに人権侵害救済機関を設置すること、自由権規約や女性差別撤廃条約などに関連した個人通報制度を認めた選択議定書を批准すること、取り調べの可視化にとりくむことを表明したことは、誠に時宜を得たもので、通常国会での実現が強く求められているところです。
 ③ 鹿児島県の志布志事件、富山の氷見事件に続き、昨年は6月に足利事件、12月に布川事件に関する再審開始が決定されました。これら2件の再審開始事件に共通している問題は、密室で自白が強要されていること、新たに開示された証拠によって有罪判決の不当性が明らかにされた点です。裁判員制度が昨年5月にスタートしていますが、えん罪を防止するために、取り調べ過程の全面的な可視化と全証拠の開示、このための早急な法整備が強く求められています。
 ④ 日本政府は07年9月、「障害者権利条約」に署名していますが、通常国会での速やかな批准と国内法整備が求められています。また、一昨年6月、衆・参両院は、アイヌ民族を先住民族であることの承認を政府に求める決議を採択し、政府も官房長官談話でアイヌ民族を先住民族であることを認め、有識者懇談会を設置しました。この有識者懇談会は、昨年7月、報告書を政府に提出しました。新政権が、この報告をふまえたとりくみを早期に実施することが求められています。さらに、本年は1910年に日本が「韓国併合」をして100年の年にあたります。この機会に、日本の植民地支配の反省を明確にし、日本軍性奴隷制等にたいする謝罪と補償、永住外国人にたいする地方参政権を認めた法律の制定などが求められています。
 ⑤ 昨年7月、女性差別撤廃委員会は、日本政府の第6回報告書の審査をおこない、8月に最終所見を公表しました。このなかでは、アイヌ女性、沖縄女性、在日コリアン女性とともに部落女性がおかれている実態を明らかにすること、政策決定にあたってはマイノリティ女性の代表の参画を求めることなどの勧告がふくまれています。本年2月に人種差別撤廃委員会は、日本政府の第3回=cd=c122第6回政府報告書の審査をおこない、最終所見を公表しました。新政権による女性差別撤廃委員会や人種差別撤廃委員会からの勧告にたいして誠実な履行が求められています。
 ⑥ 本年は、国連の定めた「文化の和解のための国際年」で、異なる文化の相互理解や宗教間の対話を推進することによって世界平和を構築していくうえで重要な役割を果たすことを目的にしています。また、本年は「国際生物多様性年」でもあります。この目的は、生物多様性が損なわれている現状にブレーキをかけ、生物多様性を守っていくことにあります。さらに本年は「国際ユース(青少年)年」でもあり、世代間の対話と相互理解をめざすとともに、人類が直面する課題を克服していくうえで、世界の青少年がもつエネルギーと、創造性、自発性を活かすことを目的にしています。わが同盟としても、関係団体と連携し、これらの国際年を活用したとりくみを展開していく必要があります。
 ⑦ 本年7月には参議院選挙があります。この選挙は、昨年の総選挙で獲得された政権交代を確実なものとすること、とりわけ平和と人権、環境を基本政策として位置づけていく政権を確実なものとしていくための歴史的意義をもった選挙です。このため、松岡とおる書記長をはじめとする推薦候補の必勝に向けて全力を傾注する必要があります。

2 部落のおかれている状況と差別の実態
 脆弱な部落の労働・産業・教育・生活実態を直撃する経済危機

 ① 非正規雇用の増大など、不況以前からも続いていた労働環境の劣化は、さまざまな影響をもたらしています。生活保護水準以下の所得の勤労者世帯(いわゆるワーキング・プア)は約660万世帯と全世帯の2割にもおよび、社会が「二極化」し、貧困が拡大しています。
 民主党政権が成立することにより、ようやく公開された「子どもの貧困率」(07年度)は14・2%(ひとり親世帯54・3%)であり、いわゆる先進諸国のなかでも高い数値を占めています。就学援助を受ける小中学生は07年度で142万人(全小・中学生の約13・7%)にもおよび、10年間で倍増しています。そして各種の調査結果でも、就学援助を受けている低所得層の子どもほど低学力傾向がいちじるしいことが明らかとなっています。そして、高校全入時代を迎えた現在、低学歴層ほど不安定就労に就かざるをえない社会構造は、むしろ強化されています。
 こうした教育と労働の悪循環を生み出す社会構造は、脆弱な部落の教育・労働実態に深刻な打撃をもたらします。部落問題に関する00年の大阪府調査、05年の福岡県や鳥取県の調査結果では、最終学歴で高校中退者をふくむ中学校卒業の割合が府県平均より2~3倍高いことや、青年の失業率が2倍に達しているという深刻な実態が明らかになっています。また部落のなかで比重が高い建設業関係者も、倒産・廃業といった経済不況の波を受けています。
 とりわけ若い世代での雇用の不安定化は深刻です。たとえば、2008年に大阪府連が実施した大阪府部落女性調査結果をみると、依然として存在する低学歴構造と相まって、部落女性の非正規雇用率は、15~24歳で73・5%(府平均49・8%)、25~34歳でも58・0%(44・9%)と平均と比較していちじるしい差があり、同じ部落女性の45~54歳の37・5%、55~64歳の49・1%と比べても若年層で深刻な状況です。また、2006年愛知県連が実施した愛知県部落女性アンケート結果においても、30歳未満の非正規雇用率は70・6%(県平均42・7%-会社などの役員を除く)と、こちらも県平均より高くなっています(府平均、県平均はいずれも「就業構造基本調査」2007年)。さらに、大阪府部落女性調査結果からは、相対的に安定した子どもをもつ若い世代が部落外に流出し、そのことによって部落内の高齢者の比率が高まっていることが明らかになっています。持続可能な地域コミュニティづくりのためには、若い世代への働きかけは急務といえます。

 社会の不安定化と自己責任論のなかで後退する人権・部落問題意識
 ② 経済危機と社会の不安定化のなか、社会・経済・政治的な仕組みに問題があるにもかかわらず、その原因を覆い隠すための「自己責任論」が依然として強調されています。その結果、一方では何らかの挫折にともなう自己否定感・孤立感が強まっています。そして解決しない不安や不満の解消の矛先は、偏狭な民族的ナショナリズムとも結びつき、部落をはじめとするさまざまなマイノリティにたいするインターネット上での差別・誹謗中傷・排外主義の横行、あるいは「誰でもよかった」という言葉に象徴されるような無差別殺人事件や大量差別投書・落書事件として顕在化しています。また、相対的に安定した正社員を基本とする労働組合、とりわけ官公庁の労働者・労働組合、あるいは部落解放運動や同和行政へのバッシングなどに意図的に仕向けられています。さらに基本的人権の尊重を顧みない、家族・地域・民族・国家や社会規範・道徳性が声高に強調されています。
 こうした結果、07年度実施の内閣府「人権擁護に関する世論調査」結果でも、人権侵害が増加したと感じている人が約42%におよび前回調査より増加しています。
 また「人権教育・啓発推進法」(00年)制定以降のさまざまなとりくみにもかかわらず、意識の現状には、さまざまな問題があります。先の「人権擁護に関する世論調査」でも、「基本的人権は侵すことのできない永久の権利として、憲法で保障されていることを知っているか」という問いにたいして、2割をこえる人が「知らない」と回答し、しかもその割合は増加傾向にあります。近年の各府県の調査でも、地域によって数値のばらつきが見られますが、部落出身者との結婚忌避(07年愛知県、08年奈良県・宮崎県・兵庫県)や部落が存在する校区に住むことへの忌避(08年奈良県)も、1~5割程度みられます。

 陰湿で巧妙な差別調査事件の増加と出身者の苦痛・不安
 ③ このような政治の反動化や経済不況のもとで、社会不安が増大し、陰湿で巧妙な差別事件が急増しています。つぎに、おもな事件について紹介します。
 第1点目は、土地差別調査事件が発覚したことです。大阪府で、マンションなどの建設予定地周辺の立地条件を調査するマーケティングリサーチ会社が、部落の所在地などの情報を報告書としてまとめ、依頼主に提出していました。報告書にまとめるさい、「地域下位地域」「地域の名前だけで敬遠する人が多い」などの表現を用いて部落の所在を報告していました。調査会社、広告代理店、ディベロッパーの3者への確認会をおこない、事件の背後にある深刻な差別構造が浮かびあがってきています。
 第2点目は、インターネット上の差別事件です。08年8月にグーグル社が開始した地図情報サービス「ストリートビュー」で、部落の画像情報を書き込んだり、「グーグル・マップ」を利用して部落の所在を書き込み差別地図をネット上で公開するなど差別的に悪用されていることが発覚しました。また、09年3月には松岡とおる参議院議員が参議院法務委員会でグーグルの新サービスであるグーグルアースの古地図と現在の地図を重ね合わせられる「古地図照合機能」の差別性について質問し、その結果、法務省の指摘を受け、4月1日に同社は差別に繋がる古地図の表記を抹消しています。また、ストリートビューによるプライバシー侵害にたいし、総務省は、8月、映像の2次利用のさいに部落差別などに悪用されないよう人権・プライバシーなどに配慮した運営ルールを策定することをグーグル社に求める方針をまとめています。
 第3点目は、経済不況のもとで、雇用差別につながる公正採用選考での違反事例が急増していることです。日本労働組合総連合会(連合)は就職差別の撤廃をめざし、08年8月、全組織を対象に「採用選考に関する実態把握のためのアンケート」を実施、民間企業の14%が統一応募用紙を使用していないなど多くの問題点が明らかにされ、「受験報告書」の全国化、公正採用選考人権啓発推進員設置を30人以上に引き下げるなどの課題が指摘されています。この調査結果をふまえ、連合は、09年6月5日に日本経団連など3団体へ就職差別の撤廃に向けたとりくみの強化について要請をおこなっています。
 第4点目は、戸籍謄本などの差別につながる個人情報の収集にかかわる差別事件です。08年5月から「改正戸籍法」が施行され戸籍謄本などは原則非公開となりましたし、部落解放運動の働きかけで各地の自治体で不正な第3者請求にたいする本人通知制度の導入がすすめられ、東京、和歌山、広島、京都、愛知などで「本人通知」がおこなわれました。大阪の大阪狭山市などでは、「登録型本人通知制度」が導入されています。09年11月24日には、「戸籍法を考える議員連盟」(副会長・松本龍衆議院議員、松岡とおる参議院議員)が結成され、戸籍制度が引き起こしている差別、プライバシー侵害について検証していくことになりました。
 第5点目は、山口県で発覚した結婚差別事件です。開業医が娘の結婚相手が部落出身とわかり、親族会議で交際に反対、「別れない」という娘に暴力をふるい、無理やり別れさせようとしたという事件で、いまだに根深い偏見と差別意識が存在していることが明らかとなっています。
 第6点目は、連続して生起している差別落書・投書・電話・電子メールなどの事件です。「ヨツは死ね」などの差別落書が発覚した和歌山県橋本市や大分県日田市、高知県土佐市、香川県高松市などで差別を扇動し命を脅かす悪質な事件があいついでいます。
 こうしたなか、福岡県立花町で痛恨の事実が明らかになりました。03年12月に発覚して以来、真相究明にとりくんできた「立花町連続差別ハガキ事件」は、09年7月7日、「被害者」が「自作自演」であったとして偽計業務妨害罪容疑で逮捕され、10月26日有罪判決が出ました。このことについて、福岡県連合会は11月24日、「「差別ハガキ偽造事件」について || 最終見解と決意」を公表し、県連としての謝罪と第3者機関の設置による提言を受けた再発防止など今後の組織としての課題について明らかにしました。


 5領域からの差別実態の調査・分析を
 ④ 部落問題にかかわる調査の多くは、「同和地区住民生活実態調査」と「市民人権意識調査」、そして差別事象の集約分析、の3つの領域でとりくまれてきました。しかし差別の現実は、部落の側にあらわれる①実態的被差別の現実②心理的被差別の現実③部落以外の側にあらわれる実態的加差別の現実と④心理的加差別の現実、そして⑤差別事件の実態という5つの領域があり、今後ともそれらを総合的に把握する必要があります。また、この10数年におよぶ格差拡大にともなう貧困の増大、さらに急激な不況と生活の不安定化の進行といった情勢の大きな変化が、部落におよぼしてきた影響を明らかにすることが求められています。
 近年、府県などが実施した生活実態調査は、鳥取県、福岡県(05年)、05年までの国勢調査の再分析から部落の実態を把握した和歌山県などがあり、意識調査は、大阪府・鳥取県・長崎県・大阪市・堺市・横浜市・名古屋市・神戸市(05年)、滋賀県(06年)、愛知県・岐阜県(07年)、宮崎県・兵庫県・山口県・大分県・奈良県(08年)などがあります。
 政権交代をふまえ、新政権にたいして1993年以降実施されていない全国的な部落の実態調査の実施を求めていくことが求められています。

二 部落解放運動の再生に向けた基本課題

 1 第67回全国大会の意義と任務
 政権交代と部落解放運動の任務

① 2009年8月30日、日本の憲政史で初めて国民が選挙によって政権を選択するという形で、歴史的な政権交代が実現しました。
 鳩山新政権にたいして、これまでの政権がないがしろにしてきた人権・平和・環境にかかわる政策を本格的に実現していくことを強く求めていかなければなりません。
私たちも深くかかわり、多くの人たちと協働で作成した人権市民会議の「日本における人権の法制度に関する提言」や反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)を中心にすすめている国際人権諸条約の具体化と積極的活用をすすめ、鳩山新政権の人権政策へ反映させていくことが重要です。
 そのための当面の重要課題として、私たちは、国内人権機関(人権委員会)の創出を柱とする「人権侵害救済法」の早期制定、行政機構としての人権省(庁)の創設、立法府での人権問題を議論する常設機関の設置、えん罪防止のための「可視化法案」の制定や証拠開示のルール策定、国連での「職業と世系にもとづく差別を撤廃するための原則と指針」の公式文書化などの実現のために全力を傾けていきます。
私たちは、反差別・人権確立を求める広範な人たちとの協働の力によって、これらのとりくみをおしすすめ、日本での「人権の法制度」確立への揺るぎない礎を築いていかなければなりません。
 それは、憲法第14条の「差別されない」という消極的な差別禁止の憲法的価値観を、社会的価値観・規範として具体化・実質化していくために法制度として定着させていこうという歴史的な段階での闘いです。これは、戦後64年の長きにわたる「国民の不断の努力」によって到達してきた段階ではありますが、差別禁止という社会的価値観・規範を定着させる闘いは、政権の枠組みが変わったからといって、たやすく実現できるというような生半可なものではなく、熾烈な闘いになることを覚悟して臨まなければならないことを肝に銘じておく必要があります。

 経済不況のもとで地域からの雇用と生活を守る闘いを本格化すること
 ② 政権交代という政治への期待がもてる反面、もう一方では前政権の新自由主義・市場原理主義のもとで格差拡大社会が進行し、今日ではデフレ基調の経済不況が深刻な生活破壊を引き起こしています。完全失業率は5・2%(約350万人弱)をこえ、求人倍率は0・45倍前後となり、高齢者はもちろんのこと若年層の生活保護世帯が急増しています。この傾向は部落において、さらに深刻な影響をおよぼしています。
 部落解放同盟は、この経済不況のもとで、非正規労働者やワーキング・プアなどの労働弱者・生活弱者の「人間の尊厳と生存権」を守る立場から、根本的な経済構造や税制構造の改革、社会的セーフティネット確立を求めるとともに、それぞれの地域を基盤にしてみずからの産業と仕事を創り出し雇用と生活を守る闘いを本格化しなければなりません。
 地域内外を結ぶ横断的なとりくみによって、従来の「特別対策的発想」から脱却し、緊急雇用対策やふるさと再生基金なども活用しながら、地域の雇用と生活を守るとりくみを真剣に追求し、「人権のまちづくり」運動の中心的課題に位置づけて展開していくことが喫緊に求められています。

再生・改革へのとりくみに最終的に決着をつけること
③ 2006年5月からの一連の不祥事にたいして、部落解放運動の再生・改革のとりくみを4年間にわたって実直に継続してきました。このとりくみは、生半可な覚悟ではできず、変えようという継続する意志の強さが必要です。
これまでみずからの力で問題惹起の運動的・組織的体質を切開するとともに、第3者委員会からの「部落解放運動への提言」に真正面から向き合い、昨年の大会では「行動指針」の策定と「規約改正」および「規律委員会規程」の制定をおこなってきました。さらに本大会で「綱領改正案」を提起し、1年間の議論をへて来年の大会で採決することにしています。
 これらの一連のとりくみをとおして、来年の大会では再生・改革のとりくみを最終的に仕上げていかなければなりません。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことなく、再生・改革のとりくみを継続して、2年後の水平社創立90周年、さらには12年後の100周年に向けて、部落解放運動のあるべき姿について私たちは責任をもって、その展望を明確に描いていかなければなりません。
以上のような本大会の意義と任務を確認しながら、10年度(第67期)の部落解放同盟の3大重点課題について提起します。

 2 2010年度の3大重点課題

 第2期松岡参議院選挙闘争のとりくみ
 ① 今年7月中旬に予定されている第22回参議院選挙では、部落解放同盟は「松岡とおる」中央書記長を全国比例区に押し立てて、2選目の必勝をめざします。
 部落解放同盟が長年にわたって求め続けてきた人権・平和・環境を基軸とした政治展開を実現していくためには、昨年の政権交代をより安定したものにしていく必要があり、今夏の参議院選挙で組織内候補である松岡とおる候補の2選目の必勝をかちとり、民主党を中心とする同盟推薦候補の当選に全力を尽くさなければなりません。2期目の選挙はひじょうに厳しいといわれますが、部落解放同盟として、松岡参議院選挙闘争は絶対に負けることができない選挙であることは言をまちません。
 第2期松岡参議院選挙闘争の勝利に向けた基本的なとりくみ課題は5点です。
 第1の課題は、「支部ニュース」発行などを通じて全同盟員・世帯にたいする「比例区=松岡とおる」の候補者記名を完全に浸透させることです。第2の課題は、同盟員1人が「固定した支持者3人以上」獲得による徹底した地域の票固めをおこなうことです。第3の課題は、組織内自治体議員による「比例区=松岡とおる」の支持要請活動の強化です。第4の課題は、直近の衆参選挙での同盟推薦候補にたいする松岡選挙への支援要請を各都府県連が責任をもっておこない、具体的な「支援票」を出してもらうことです。第5の課題は、共闘・友誼団体への「比例区=松岡とおる」推薦・支持の要請行動を各都府県連がていねいにやりきることです。

 「人権侵害救済法」制定に向けた闘い
 ② 本年1月18日に開会した第174通常国会で、必ずや「人権侵害救済法」の制定を実現しなければなりません。
 02年3月に自公政権の小泉内閣のもとで閣法として提案された「人権擁護法案」は、独立性・実効性・メディア規制などの面で重大な欠陥をもっており、抜本的な修正論議がなされましたが、結局、衆議院解散にともない自然廃案となりました。その後、安倍政権のもとでは法案そのものが黙殺され、福田政権や麻生政権のもとでも再提出のための自民党内の議論がまとまらず、今日にいたっています。
 私たちは、一昨年の12月の段階で、「麻生政権のもとでは充実した法案の成立は困難であり、政権交代後の新政権のもとでの実現をめざす」ことを決定してきました。
 昨年8月の総選挙で見事に国民が投票の力で政権交代を実現させ、民主党を中心にした社民党・国民新党の3党連立による鳩山内閣が成立しました。新政権を担う各党のこれまでのマニフェストから判断しても、「人権侵害救済法」の制定が実現可能な段階に入ったということができます。現実に、昨年9月16日、新組閣にあたっての就任会見で、千葉法務大臣は「人権侵害救済機関の設置」を第1の課題として表明しました。
私たちは、この動向を歓迎するとともに、民主党がすでに党議決定している「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」を与野党協議の議論で整理し直して、3月中旬以降の国会で提出をおこない、今国会で成立させるべきであると考えています。
 そのために、国会内外の闘いのすそ野を大きく広げながら、「人権侵害救済法」の制定実現をかちとっていきます。

 狭山第3次再審闘争のとりくみ
③ 昨年12月16日にもたれた第2回3者協議(裁判官・検察官・弁護士)で、門野裁判長は検察官にたいして、「犯行現場」「筆跡」「自白」「死体」などに関係する8点にわたる証拠開示勧告をおこないました。
この証拠開示勧告は、私たちが長年求め続けてきたものであり、事実調べ-再審開始に向けて一歩前進したと評価することができます。これらの動きの背景には、えん罪防止のための裁判制度の民主的改革へのねばり強いとりくみや政権交代による司法姿勢の変化、さらにこの間出された足利事件・布川事件など事実調べや証拠開示によって再審が開始されたえん罪事件があいついだことなどが大きく影響していることは明白です。
 門野裁判長は2月に退官し、新裁判長との第3回3者協議が5月に予定されています。私たちは、「勧告」がなされたとはいえ、有利な証拠が直ちに出てくるというような安易な考え方はもっていませんが、この「勧告」を足がかりに、さらに証拠の全面開示と事実調べを迫り、弁護団との強固な連携のもとに狭山再審の実現と石川無罪をかちとっていかなければなりません。
 同時に、国会での「可視化法案」などの制定をはじめとした司法の民主化のとりくみの強化や狭山住民の会などを中心にした共闘の輪を全国津津浦浦にまで拡大し、反えん罪のネットワークを大きく広げていくことが必要です。

 

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