【兵庫】(前号既報)行政書士が、興信所などの依頼を受け「職業上請求書」を不正使用し第3者の住民票や戸籍謄本を取得していた問題で、兵庫県連は4月14日、事実確認会をひらいた。
全容解明へ全力行政書士を厳しく追及
確認会で、不正取得をしていたY行政書士(現在廃業)は、「(興信所からの依頼で戸籍謄本などを請求することについて)悪いということに気づかなかった。一種の業務と錯覚していた。差別意識はなかった。興信所経営者の『弁護士会から依頼を受けている』との言葉を疑わなかった。兵庫県行政書士会から事情聴取を受けて、えらいことをしてしまったと思った。今回も、部落解放同盟から部落差別にあたると指摘を受けて、申し訳ないと思った」とのべた。また、「書士会から廃業勧告が出たので『迷惑をかけた、やめざるを得ない』と廃業勧告を受け入れた」と語った。事件の経過
県連は、昨年12月に事件の情報を入手。Yとのやりとりが記載されていた興信所の業務日誌に「地名そうかん返せ」など興信所同士で部落地名総鑑の貸し借りがあると受けとれる記述があることや、行政書士が「職務上請求書」用紙を興信所に横流ししている可能性もあることから、県連は重大な事件として全容解明に向け、全力でとりくんでいる。3年間で約800枚
これまで、Yは、01年5月ごろ、仕事の依頼が少なく「もっと仕事をとりたいと思っていた」。電話帳に載っている興信所の広告を見て、「興信所なら住民票や戸籍謄本などを必要とするだろう。仕事の依頼が来るだろう」と思い、適当な5社を選び、「必要なら住民票や戸籍謄本を取り寄せます」旨のファクシミリを送付。数か月後、「調査で住民票がほしい」などと、ファクシミリを送っていない興信所も含め合計6社から依頼が来る。
01年~04年2月までの約3年間、6社からの依頼で、約800枚の職務上請求書を使い、不正請求。とくに、兵庫県内の興信所経営者Gからは頻繁に依頼があり、約800枚のうち約半数の400枚はGからの依頼で不正請求した。興信所からの依頼は電話かファクシミリ。請求書の使用目的の欄に『調査』『添付資料』、提出先に『依頼人』と記述し自治体に提出すると、ほとんどの自治体で住民票や戸籍謄本の交付を受けた。「最初は悪いことだという意識があったが、ほとんどの市町村役場が交付請求に応えてくれるので、次第に正当な業務と思うようになった」。1枚あたり3000円程度で取引していた。
03年12月、兵庫県行政書士会が職務上請求書の適正使用のよぴかけ文書を会員に通達。それを受け、04年2月、Yは「後ろめたい気持ちになった」と、不正請求をやめる。
04年12月、兵庫県連が情報を入手し、事件発覚。今年3月、行政書士会理事会の綱紀委員会で、Yの処分について「廃業勧告」決定。4月7日、Yに廃業勧告。8日、Yが廃業届を提出した。
身元調査を許さない仕組みの拡充を
国民支配のための戸籍
興信所(探偵社)などによる戸籍調べ、身元調査をやめさせるとりくみは、全国水平社時代から現在まで連綿とつづいている。これまでの運動の成果で、戸籍の俗称欄の改正など、戸籍調べに制限を加えてきた。不正取得があと絶たず
戦後の部落解放連動のなかで、1872(明5)年に編成された「壬申戸籍」の撤廃連動を1968年、全国的に巻き起こし、閲覧を禁止させた。「壬申戸籍」には身分、宗教、犯罪歴などが明記され、被差別部落民には「元穢多」「新平民」などの差別記述があり、それが国の制度として残っていたため、身元調査への悪用があとをたたなかった。70年には、「壬申戸籍」の封印、76年には、戸籍・除籍の公開制限につなげた。閲覧への制限が厳しくなるにつれ、全国の被差別部落の所在地などが記載された部落地名総鑑(75年に発覚)が出回りだし、日本の有力な大企業や大学関係者などが購入、差別身元調査に利用された。「解放新聞」購読の申し込み先
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